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Jリーグ・国内

矢板中央「谷間の世代」は4強の壁を破れるか。“サッカー好きの集まり”が大化けした要因とは?

小室功

2020.01.09

「今のチームには飛び抜けた存在がいない」という矢板中央は、団結力を武器に快進撃を続けている。写真:徳原隆元

「今のチームには飛び抜けた存在がいない」という矢板中央は、団結力を武器に快進撃を続けている。写真:徳原隆元

 大会前の評判はさほど高くなかった。

 準決勝の舞台となる“埼スタ”に勝ち上がるのは、3年ぶりの出場ながら優勝候補に挙げられていた市立船橋(千葉)。もしくは2019年度のインターハイでベスト4に入った京都橘(京都)というのが大方の見方だった。続くのは、古豪復権にかける四日市中央工(三重)か、中・高一貫指導が実を結ぶ日章学園(宮崎)か。

 そんな激戦ブロックを抜け出したのが3年連続10回目の出場となる矢板中央(栃木)だ。前々回がベスト4で、前回がベスト8と着実に足跡を残しているものの、今大会のチームは「谷間の世代」といわれ、高橋健二監督も「正直、全国にこられるとは思っていなかった」と、口にするほどだった。

「県予選の4試合すべてで失点していたし、全国にきてからも1回戦、2回戦と失点を重ねていた。3回戦の7試合目で、ようやく失点ゼロ。最後まで諦めない選手たちの姿勢やひたむきさは今のチームのいちばんいいところだけど、ここまでよく勝ち上がってこられたなというのが本音です(苦笑)」(高橋監督)

 3回戦から、中1日を置いて行われた準々決勝の相手は四中工だった。高橋監督の脳裏をかすめたのは「6年前の1回戦」だ。
 
「立ち上がりから次々に失点してしまい、0-3で始まったゲーム。前半のうちに何とか2点を返したけれど、(そのままのスコアで)負けてしまった。悔しい気持ちが残っているので、今回その借りを返せれば、と」(高橋監督)

 雪辱に燃えた一戦は、前半の2ゴールで優位に立った矢板中央が、俄然、一体感を高め、2試合連続となる失点ゼロ。大会が進むに連れて、完全に前評判を覆した矢板中央が四中工を下した。

 快進撃を続けている矢板中央だが、ここ1年の戦いぶりを振り返れば、苦難の連読だった。

 前回覇者として臨んだプリンスリーグ関東(参加10チーム)では、春先から散々な内容と結果で、終わってみれば、3勝3分け12敗の最下位。得点20、失点44の不甲斐ない数字を残してしまった。前半戦の横浜ユース戦では、0-7という屈辱的大敗も喫している。

「前年度のチームは個性が強く、個々の能力も高かったけれど、今のチームには飛び抜けた存在がいない。ただ、本当にサッカーが好きな選手たちの集まりで、仲間のためにひとりひとりが頑張れるし、練習のときからみんなが大きな声を出して取り組める。そういう姿を私はずっと見てきた。選手権に出るのは難しいといわれていたけれど、そんな彼らでも精いっぱい努力すればここまでこられることを証明してくれた。日々の成長が手に取るように感じられて、本当にうれしく思いますね」(高橋監督)
 

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