海外サッカー

バルサが仕掛けた!? 守護神交代へカウントダウン、急速に広まったテア・シュテーゲン不要論と“禁断の”ジョアン・ガルシア獲得計画の裏側

下村正幸

2025.06.05

バルサ入団が噂されるエスパニョールのジョアン・ガルシア(左)。テア・シュテーゲン(中央)とシュチェスニー(右)の去就も含め、クラブの思惑通りに事は進むのか。(C)Getty Images

 バルセロナのゴールキーパー事情が混迷を深めている。2024-2025シーズンの開幕当初はマルク=アンドレ・テア・シュテーゲンとイニャキ・ペーニャの2人体制でスタートしたが、テア・シュテーゲンが長期離脱を余儀なくされ、急遽10月に加入したヴォイチェフ・シュチェスニーが正GKの座を奪取。結果的に国内3冠の立役者となった。

【動画】パリSGがインテルを圧倒! CL決勝ハイライト
 スペイン紙『SPORT』によると、シュチェスニーにはその功績を評価され、2年契約の延長オファーが提示されているという。これによりGKの頭数は揃っているはずだが、バルセロナはさらにエスパニョールの新星、ジョアン・ガルシアの獲得に動いた。

 今季エスパニョールでブレイクした24歳のジョアン・ガルシアは、今後10年を見据えて正守護神を任せられる実力と将来性を兼ね備えており、契約解除金2500万ユーロ(約40億円)は昨今の移籍市場の推移を考えれば、バーゲン価格と言っていい。バルサにとっては"市場のチャンス"として捉えるに十分な案件だった。

 そんな中、不意を突かれたのがテア・シュテーゲンだ。ドイツ代表のマヌエル・ノイアーが代表引退を表明し、来年のW杯にはついに正GKとして出場できる可能性が高まっていた矢先の出来事だった。
 
 さらに状況を混乱させたのは、ジョアン・ガルシア獲得報道とともにSNS上で急速に広まった「テア・シュテーゲン不要論、限界論」だ。実際、昨年9月に負傷する以前から、守備範囲の広さや反応速度の衰えが指摘されていた。三度目の右膝負傷も影響し、スペイン紙『AS』は「パフォーマンスの低下とコンディションの不安により、クラブのスポーツ部門はすでに見切りをつけている」と伝えている。

 SNSでは誹謗中傷も見受けられ、『SPORT』元編集長のエルネスト・フォルチ氏は「何者かが仕組んだ"モビング(職場いじめ)"のような動きがある」と、黒幕の存在を示唆している。

 クラブが描く青写真は明快だ。ジョアン・ガルシアを正GKに据え、シュチェスニーを控えに回し、テア・シュテーゲンは売却するという形を理想としている。一方、来年6月に契約満了を迎えるイニャキ・ペーニャは、『SPORT』によれば、あっさりレギュラーから外されたことで移籍するしかないと覚悟を決めている様子だという。ただ、約200万ユーロ(約3億2000万円)という高額の年俸がネックとなっており、バルサが一部を負担する形でのレンタル移籍の可能性も浮上している。

 最も予測がつかないのは、やはりテア・シュテーゲンの動向だ。2016年にリーグ戦の出場機会が限られ、カップ戦要員とされたことに苛立ち、「すべての大会でレギュラーとして起用されなければ出て行く」と主張し、当時のライバルGKクラウディオ・ブラーボを事実上クラブから追い出したエピソードは有名だ。それ以来、ケガの時期を除いては常にバルサのゴールマウスに君臨し続けてきた。
NEXT
PAGE
2人が共存するのは不可能。一方が加入すれば、もう一方は去らなければならない