攻撃時には、モドリッチが中盤の底でレジスタ(ゲームメーカー)として攻撃の方向性とリズムを作り出し、フォファナとラビオは左右の広いエリアを動いてサポートを提供。さらに機を見て前線に攻め上がって攻撃に厚みをもたらす。守備時には、フォファナとラビオが運動量とデュエルの強さを活かした前に出る守備で相手の中盤と渡り合い、モドリッチはその後方で危険なスペースをケアしながら、鋭い読みで相手のパスをインターセプトする。
この中盤がピッチ中央で常に大きな存在感を発揮することでチーム全体の構造が安定し、両サイドのアレクシス・サーレマーケルスとペルビス・エストゥピニャン、そして前線のプリシック、サンティアゴ・ヒメネスは自由かつ積極的に振る舞うことが可能になった。
アッレーグリはラビオ加入後最初のボローニャ戦では、あえて攻撃のキーマンともいえるプリシックを外し、トップ下によりフィジカルで強度の高いロフタス=チークを入れる、守備の安定を優先した布陣を選んだ。しかしその試合内容を見て攻守のバランスにメドが立ったのか、続くウディネーゼ戦からはロフタス=チークではなくプリシックをトップ下に起用。ラスト30mにおける攻撃のクオリティーを優先した布陣へと移行している。
ウディネーゼ戦で2得点・1アシストとすべてのゴールに絡んだプリシックは、このナポリ戦でも、開始3分に左サイドを単独で抜け出してペナルティーエリアに侵入、大外からファーサイドに走り込んだサーレマーケルスに絶妙のアシストを送り込んで先制点を演出、さらに31分には自ら2-0のゴールを決める大活躍。ラスト30m攻略を一手に担う絶対的エースとしての地位を確立しつつある。
ただし、これは逆から見れば、現在のミランは攻撃、とりわけラスト30mの攻略をプリシックの個人能力だけに依存しているということでもある。この試合でも、左WBのエストゥピニャンがエリア内での不用意なファウルでPKを献上した上に退場になり、1人少ない10人で専守防衛を強いられるまでの約1時間、オープンプレーから作り出した決定機は上で見た2得点の場面以外は、26分にカウンターアタックからフォファナがシュートを放った1回だけ。
その決定機も、裏に飛び出したフォファナに自陣から絶妙なスルーパスを送り込んだのはプリシックだった。さらに言えば、この試合での2得点はいずれも、ナポリの守備陣に故障者が続出したため、今シーズン初めての出場機会を得た若いCBルカ・マリアヌッチのミスに助けられた側面も小さくない。
とはいえミランの前線は、故障離脱から戻ってきたばかりのラファエウ・レオン、新加入でチームに馴染むのはこれからのクリストファー・エンクンクという2人が、まだ本格的に起用される機会がない状態であり、攻撃の最終局面には改善・向上の余地が残されている。現時点で重要なのは、モドリッチ、ラビオという新戦力によってチームの「へそ」と言うべき中盤がしっかりと固まり、全体の構造が安定したことの方だろう。
この試合のラスト30分、10人になったにもかかわらず5-3-1のローブロックでナポリの攻勢を耐え切った事実が示す通り、アッレーグリが何よりも重視する守備の安定は、すでに確立されつつある。ボール保持や地域の支配に強くこだわらず、重心を低めに設定して守備のリスクを減らし、攻撃ではピッチを広く使って前線のアタッカーの個人能力を活かすというアッレーグリのサッカーを実現する「土台」は、現時点ですでにかなり堅固になっていると見ていい。
今後も首位戦線で主役を演じていけるかどうかは、ここにレオンをはじめとする攻撃のクオリティーをどれだけ上乗せして行けるかに懸かっていると言えるだろう。その手始めとなるであろう次節のユベントス戦が楽しみだ。
文●片野道郎
【動画】退場者を出したミランだったが、ナポリに競り勝って首位浮上!
この中盤がピッチ中央で常に大きな存在感を発揮することでチーム全体の構造が安定し、両サイドのアレクシス・サーレマーケルスとペルビス・エストゥピニャン、そして前線のプリシック、サンティアゴ・ヒメネスは自由かつ積極的に振る舞うことが可能になった。
アッレーグリはラビオ加入後最初のボローニャ戦では、あえて攻撃のキーマンともいえるプリシックを外し、トップ下によりフィジカルで強度の高いロフタス=チークを入れる、守備の安定を優先した布陣を選んだ。しかしその試合内容を見て攻守のバランスにメドが立ったのか、続くウディネーゼ戦からはロフタス=チークではなくプリシックをトップ下に起用。ラスト30mにおける攻撃のクオリティーを優先した布陣へと移行している。
ウディネーゼ戦で2得点・1アシストとすべてのゴールに絡んだプリシックは、このナポリ戦でも、開始3分に左サイドを単独で抜け出してペナルティーエリアに侵入、大外からファーサイドに走り込んだサーレマーケルスに絶妙のアシストを送り込んで先制点を演出、さらに31分には自ら2-0のゴールを決める大活躍。ラスト30m攻略を一手に担う絶対的エースとしての地位を確立しつつある。
ただし、これは逆から見れば、現在のミランは攻撃、とりわけラスト30mの攻略をプリシックの個人能力だけに依存しているということでもある。この試合でも、左WBのエストゥピニャンがエリア内での不用意なファウルでPKを献上した上に退場になり、1人少ない10人で専守防衛を強いられるまでの約1時間、オープンプレーから作り出した決定機は上で見た2得点の場面以外は、26分にカウンターアタックからフォファナがシュートを放った1回だけ。
その決定機も、裏に飛び出したフォファナに自陣から絶妙なスルーパスを送り込んだのはプリシックだった。さらに言えば、この試合での2得点はいずれも、ナポリの守備陣に故障者が続出したため、今シーズン初めての出場機会を得た若いCBルカ・マリアヌッチのミスに助けられた側面も小さくない。
とはいえミランの前線は、故障離脱から戻ってきたばかりのラファエウ・レオン、新加入でチームに馴染むのはこれからのクリストファー・エンクンクという2人が、まだ本格的に起用される機会がない状態であり、攻撃の最終局面には改善・向上の余地が残されている。現時点で重要なのは、モドリッチ、ラビオという新戦力によってチームの「へそ」と言うべき中盤がしっかりと固まり、全体の構造が安定したことの方だろう。
この試合のラスト30分、10人になったにもかかわらず5-3-1のローブロックでナポリの攻勢を耐え切った事実が示す通り、アッレーグリが何よりも重視する守備の安定は、すでに確立されつつある。ボール保持や地域の支配に強くこだわらず、重心を低めに設定して守備のリスクを減らし、攻撃ではピッチを広く使って前線のアタッカーの個人能力を活かすというアッレーグリのサッカーを実現する「土台」は、現時点ですでにかなり堅固になっていると見ていい。
今後も首位戦線で主役を演じていけるかどうかは、ここにレオンをはじめとする攻撃のクオリティーをどれだけ上乗せして行けるかに懸かっていると言えるだろう。その手始めとなるであろう次節のユベントス戦が楽しみだ。
文●片野道郎
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