ただ、この起用法はひとつの避けがたいリスクも孕んでいる。左サイドに本来いるべきウイングがいない左右非対称の陣形になるため、すでに完成されていたチームの全体構造がバランスを失いかねないというのがそれだ。このミラン戦では、その側面がより強く表面に出た感があった。
攻撃が右サイドに大きく偏って、右WGポリターノからのクロス以外に危険な場面を作り出す攻め手がなくなった一方で、バランスを取るためにボールのラインよりも後ろに留まる時間が長くなったデ・ブライネは、肝心のラスト30m攻略において半ば蚊帳の外に置かれるような格好になってしまったのだ。
オープンプレーからのシュートは、ブロックされたエリア外からのミドルシュート1本、ペナルティーエリア内へのパスも、前半40分に右ポケットに走り込んだディ・ロレンツォに送り込み、惜しいチャンスを作り出した1本だけにとどまった。相手が10人になり一方的な攻勢に立っても、なかなか決定機が作り出せなかった70分過ぎ、コンテ監督がラスムス・ホイルンド、マクトミネイとともにデ・ブライネも交代させた事実は象徴的だ。
10日ほど前に行なわれたチャンピオンズリーグのリーグフェーズ第1節、古巣マンチェスター・シティ戦では、開始わずか20分過ぎにディ・ロレンツォが一発レッドで退場になった際、代わりのDFオリベラを投入したのと入れ替わりでベンチに下げられるというアクシデントもあった。この2つの交代劇が物語っているのは、少なくとも現時点において、デ・ブライネはチームにとって絶対不可欠な存在になってはいないということだ。
とはいえもちろん、彼を「遊軍」として起用するコンテ監督の狙いが、既存のチーム構造との兼ね合いの中で、彼がチームに不可欠な存在になっていく道筋をつけるところにあることは間違いない。デ・ブライネを中心に周囲の流動性が高まり、常に全体のバランスを保ちながらも、彼がより高頻度でラスト30m攻略に絡んでいくような状況を作り出すことが、目指すべき到達点だろうか。開幕からCLを含めて6試合しか消化していない今はまだ、そこに向かうためのすり合わせ、試行錯誤を重ねている段階と見るべきなのだろう。
デ・ブライネ自身、現在直面している状況に小さくないストレスを抱えているであろうことは、交代で下がった際に苛立ちを隠し切れず、コンテ監督と挨拶を交わすことなくベンチに直行したことからも推察できる。試合後の記者会見で、デ・ブライネのこの振る舞いについてコメントを求められたコンテ監督の言葉は、かなり辛辣なものだった。
「デ・ブライネが交代に苛立ちを見せたのは試合結果のせいだと思いたい。もしそうでないのなら、彼は怒る相手を間違えている」
交代させた自分に矛先を向けるのは見当違いだ、というこのコメントは、コンテがデ・ブライネのパフォーマンスに満足していないという明確な含みを持っている。こうした形で選手との間に緊張関係を作り出し、それが起爆剤になるよう仕向けるというのは、コンテがしばしば使うマネジメント手法だ。
新しい環境で新しい監督のやり方に直面したデ・ブライネが、今後どう自らのパフォーマンスを高めていくのか、それに伴ってナポリというチームがどのように成長していくのか(あるいはどこかで大きな転換点が訪れるのか)。引き続き注目していく価値は十分にある。
文●片野道郎
【動画】デ・ブライネのPKで1点差に詰め寄ったナポリだったが、敵地でミランに敗戦
攻撃が右サイドに大きく偏って、右WGポリターノからのクロス以外に危険な場面を作り出す攻め手がなくなった一方で、バランスを取るためにボールのラインよりも後ろに留まる時間が長くなったデ・ブライネは、肝心のラスト30m攻略において半ば蚊帳の外に置かれるような格好になってしまったのだ。
オープンプレーからのシュートは、ブロックされたエリア外からのミドルシュート1本、ペナルティーエリア内へのパスも、前半40分に右ポケットに走り込んだディ・ロレンツォに送り込み、惜しいチャンスを作り出した1本だけにとどまった。相手が10人になり一方的な攻勢に立っても、なかなか決定機が作り出せなかった70分過ぎ、コンテ監督がラスムス・ホイルンド、マクトミネイとともにデ・ブライネも交代させた事実は象徴的だ。
10日ほど前に行なわれたチャンピオンズリーグのリーグフェーズ第1節、古巣マンチェスター・シティ戦では、開始わずか20分過ぎにディ・ロレンツォが一発レッドで退場になった際、代わりのDFオリベラを投入したのと入れ替わりでベンチに下げられるというアクシデントもあった。この2つの交代劇が物語っているのは、少なくとも現時点において、デ・ブライネはチームにとって絶対不可欠な存在になってはいないということだ。
とはいえもちろん、彼を「遊軍」として起用するコンテ監督の狙いが、既存のチーム構造との兼ね合いの中で、彼がチームに不可欠な存在になっていく道筋をつけるところにあることは間違いない。デ・ブライネを中心に周囲の流動性が高まり、常に全体のバランスを保ちながらも、彼がより高頻度でラスト30m攻略に絡んでいくような状況を作り出すことが、目指すべき到達点だろうか。開幕からCLを含めて6試合しか消化していない今はまだ、そこに向かうためのすり合わせ、試行錯誤を重ねている段階と見るべきなのだろう。
デ・ブライネ自身、現在直面している状況に小さくないストレスを抱えているであろうことは、交代で下がった際に苛立ちを隠し切れず、コンテ監督と挨拶を交わすことなくベンチに直行したことからも推察できる。試合後の記者会見で、デ・ブライネのこの振る舞いについてコメントを求められたコンテ監督の言葉は、かなり辛辣なものだった。
「デ・ブライネが交代に苛立ちを見せたのは試合結果のせいだと思いたい。もしそうでないのなら、彼は怒る相手を間違えている」
交代させた自分に矛先を向けるのは見当違いだ、というこのコメントは、コンテがデ・ブライネのパフォーマンスに満足していないという明確な含みを持っている。こうした形で選手との間に緊張関係を作り出し、それが起爆剤になるよう仕向けるというのは、コンテがしばしば使うマネジメント手法だ。
新しい環境で新しい監督のやり方に直面したデ・ブライネが、今後どう自らのパフォーマンスを高めていくのか、それに伴ってナポリというチームがどのように成長していくのか(あるいはどこかで大きな転換点が訪れるのか)。引き続き注目していく価値は十分にある。
文●片野道郎
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