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日本代表

苦難を乗り越えたJ1制覇の牽引車!仲川輝人が背番号23に込めた野望とチーム愛

飯尾篤史

2019.12.08

写真:茂木あきら(THE DIGEST編集部)

写真:茂木あきら(THE DIGEST編集部)

 横浜の右ウイングと言えば、今や仲川の名前がスッと浮かぶ。だが、そのプレーは今、ウインガーの範疇を超えている。

 例えば、鹿島戦の得点シーン。左足のシュートの正確さもさることながら、特筆すべきはパスを呼び込む動きだ。シュートスペースを作る膨らみ方は、まるでストライカーのそれだった。

 ストライカーらしさは、左サイドからのクロスを待つ際にも見て取れる。相手左SBの視界から外れるように大外で待ち、ファーサイドまで流れてきたボールを流し込むこともあれば、相手の前にさっと入り、鼻先で押し込むこともある。

 こうしたポジショニングと駆け引きのセンスも実にストライカー的で、ウイングでありながら優れた得点嗅覚は、マンチェスター・シティのラヒーム・スターリングを彷彿とさせる。

「そうした得点パターンはうちの特徴。DFが『え?』っていうタイミングで(天野)純くんが入れてくれて、驚いたDFが動きを止めた瞬間に僕が入っていく。逆サイドにボールがある時の立ち位置や入り方は、かなり意識してますね」

 最大の魅力は50mを5秒台で駆ける脚力。だが、スピード一辺倒ではないところが、いわゆる「スピードスター」と呼ばれる選手との違いだろう。「相手の懐に入ったり、緩急を意識している」というドリブルの工夫だけでなく、狭いエリアでのプレーの巧さも際立っている。
 
 アンジェ・ポステコグルー監督のアタッキングサッカーにおいては、SBがインサイドに入ったり、インサイドハーフが大外に出たりして攻撃を組み立てる。

 とりわけ今季は、プレーメーカーの三好康児(現ロイヤル・アントワープ)と、もともと攻撃の選手だった広瀬陸斗、新加入のふたりが右インサイドハーフと右SBに入ることが多かったため、右サイドからチャンスを作る機会が増えた。こうした動きに合わせ、仲川がピッチ中央に流れる機会も少なくない。

「自分が大外に開いている時は、康児や陸斗の動きがよく見えるので、彼らに合わせて、自分も動くようにしている。流動的な崩しは、だいぶ増えてきて、監督の狙いを表現できていると思います」

 左サイドでチャンスを作り、右サイドで決める――。これが、昨季の攻撃パターンだったが、今季は右からも好機を築けるようになった。昨季の公式戦で13ゴールを記録した仲川が、今季に入ってしばらくゴールから遠ざかっていたのは、チームの進化と関係があったのだ。

「もともとボールに触りながらリズムを作りたいタイプ」と話すように、相手のギャップを突くのが得意だが、ポステコグルー監督の戦術の中で、プレーの幅を広げている面も大いにあるだろう。

 練習で磨いたことを試合で試し、それが自信となってさらなるトライに繋がる。できることがどんどん増え、サッカー選手として幸せな循環にあると言っていい。

 だが、そんな仲川も、わずか1年前には、サッカー選手としての未来がどうなるのか分からない状況にいたのだ。
 

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