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日本代表

苦難を乗り越えたJ1制覇の牽引車!仲川輝人が背番号23に込めた野望とチーム愛

飯尾篤史

2019.12.08

 プロ4年目の昨季、仲川は半年間の期限付き移籍をしたアビスパ福岡から満を持して復帰した。

 大学4年の秋に負った右膝前十字靭帯および内側側副靱帯断裂、右膝半月板損傷の大怪我が完治し、プロ2年目でのFC町田ゼルビア、3年目の福岡と、二度の期限付き移籍によって試合勘やゲーム体力も取り戻したという自信があった。

 しかし、仲川を待っていたのは、紅白戦にも満足に絡めない境遇だった。

 4月のルヴァンカップ・FC東京戦でアシストをマークしたが、それでもすぐに状況が変わったわけではない。ようやくリーグ戦でチャンスを得られ、ゴールという結果でスタメンを奪取するのは、5月まで待たなければならなかった。

「その間、腐らずやれたのが良かった」と仲川は振り返ったが、その言葉では言い尽くせない苦しさがあったはずだ。

「たしかに簡単じゃなかったですね。長かったですから……」

 仲川は天井を仰ぎ見て、軽く息を吐き出した。

「マリノスでラストチャンスという覚悟でいたので。でも、自分がふて腐れて、それを態度やプレーに出して、チームの雰囲気が悪くなるのは一番良くない。だから笑顔を見せつつ。チャンスはいつ訪れるか分からないから、その日が来ることを信じて、毎日準備していました」
 
 開幕後の3月に、クラブがカメルーン代表の右ウイング、オリヴィエ・ブマルを獲得したことにはショックも受けた。

 だが、その存在を発奮材料に変えた。

「びっくりしましたけど、それも刺激になったというか。負けられないっていう気持ちが出てきて、ブマルとの競争も自分を成長させてくれたと思います」

 なぜ、仲川は腐らず、黙々と準備して、チャンスを待つことができたのか――。

「なんで、ですかね……」

 答えはひとつではないだろう。大怪我をした自分にオファーをくれたクラブに恩返しができていないという気持ち、プロになるまで支えてくれた家族に対する感謝の気持ち、大怪我を負って改めて感じられた「サッカーが大好きだ」という気持ちが支えになったのは間違いない。
 

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