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Jリーグ・国内

Jリーグの新時代を切り開いた横浜の戴冠。3つの要因から探るチーム戦術とクラブ運営の妙

清水英斗

2019.12.09

 オフに獲得した選手もクラブの戦術に合う選手ばかりだったが、特にシーズン中、これほど迅速にピンポイント補強を成功させたのは大きい。横浜の状況判断が的確で早いことは、ピッチ外も同じだった。これらの補強がチームの危機を救い、ポジションの競争性を保ち、シーズン後半にはさらなる躍進を導いた。横浜の優勝が、スカウトの勝利に支えられたのは間違いない。

 そして、この第三の優勝要因は、第一と密接に絡んでいる。つまり、チームとして戦術の型が明確に存在するからこそ、欲しい選手が明らかであり、スカウティングは効率的に進められる。これも大事なポイントだ。

 今の時代、補強したい選手はデータベースを利用して世界中から探すことができる。横浜ほど戦術に型があれば、キー項目の検索だけで、かなり選手を絞り込めるのではないか。また、シティ・フットボール・グループのスカウト網を生かすにしても、そもそもクラブとして欲しい選手像がハッキリしていなければ、宝の持ち腐れだ。横浜は戦術もスカウティングも、すべてが総合的に繋がり、このパフォーマンスを生み出した。
 
 人が限定される代表チームの場合は、ある程度は人から逆算してチーム作りをしなければならない。しかし、Jクラブに関しては、よりクラブの型から選手を逆算する時代へと突き進むだろう。それはフワッとしたスローガンのような型ではなく、そのままデータベースで選手を検索できる型だ。そうやってスカウティングやデータ分析の効果を高め、世界に散らばる、あるいは下部リーグに眠る無数の候補から、チームに合う選手を一本釣りする。

 Jリーグの外国人選手の出場枠も5に広がった。こうした補強戦略で優位を出せるクラブと、出せないクラブの差は、今後より大きくなるだろう。近所のチラシを見ながら獲得できる選手に合わせてチームを作るようなクラブでは、もはや時のスピード感と、地球の広さについていけない。

 垣根はどんどん取り払われていく。この時代の傾向は、今後も変わらないか、むしろ加速するだろう。旧来の狭い運営を続けるJクラブは、思いのほか早く淘汰されるかもしれない。

 斬新な戦術に留まらない。それと密接につながったクラブ運営のすべてにおいて、横浜の優勝は新たなJの時代を切り拓いた。

文●清水英斗(サッカーライター)
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