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史上初のC降格、サンプドリアが抱えていた大問題…シンガポールの「影のオーナー」が送り込んだ役職のない人物が主導権、「マンチーニ一派」の処遇は不明【現地発コラム】

片野道郎

2025.05.18

コッパ・イタリア2回戦で宿敵ジェノアにPK戦で勝利したサンプドリアだったが、セリエBでは18位に終わりC降格が決定した。(C)Getty Images

コッパ・イタリア2回戦で宿敵ジェノアにPK戦で勝利したサンプドリアだったが、セリエBでは18位に終わりC降格が決定した。(C)Getty Images

 問題は「Fun88」がアジアのいくつかの国で違法な形で営業しており、それが当初から明らかになっていれば、ジェノバ裁判所はサンプの買収を認めなかった可能性が高いという点にあった。

 これは余談になるが、『ジョシマール』にこの記事を寄せた英国在住ジャーナリストのフィリップ・オークレアは、ルイ・フィリップという名前で長年シンガーソングライターとしても活動しており、1990年代には日本の「渋谷系」を代表するレーベルだった「トラットリア」からもアルバムをリリースしている。

 閑話休題。ラドリッツァーニが去り、マンフレーディを通じてテイが実質的なオーナーとなった昨春以降、クラブ内ではそのテイが送り込んだとされる何人かの人物が、公式な役職を持たないまま運営の主導権を握るようになったと言われている。そのため、アッカルディSD招聘から二度の監督交代に至るまで、今シーズン続いてきた混乱が、実質的に誰の責任で行なわれたのかすら明らかになっていない。

 こうして迎えた4月初め、スペツィアに0ー2で敗れてついに降格圏に転落するに至って、クラブはセンプリチの解任を決断する。後任にはピルロの復帰も取り沙汰されたが、そのためには対立関係にあるアッカルディSDを解任する必要があった。続いて浮上したのはセリエA、Bで「残留請負人」としての実績を持つジュゼッペ・イアキーニの監督招聘だったが、これも話がまとまらないままに終わった。

 混乱が続く中、クラブに対して厳しい批判をぶつけてきたマスコミやサポーターが強く望んでいたのは、かつての黄金時代のシンボル、マンチーニが「救世主」としてクラブに戻ってくることだった。マンチーニはクラブから打診された監督就任を断り、クラブ役員への就任話も退けていたが、最終的には非公式の外部アドバイザーという形で間接的に協力することになる。

 最終的にセンプリチの後釜には、監督にアルベリコ・エバーニ、助監督にアッティリオ・ロンバルドと、かつてマンチーニとともにサンプでプレーし、引退後はコーチとしても仕えた2人が就任。さらにフロントも、アッカルディSDを解任して後任にマンチーニの長男アンドレアを据え、さらにやはり黄金時代のサンプでプレーしたジョバンニ・インベルニッツィをテクニカルコーディネーターに就けるなど、「マンチーニ人脈」で固める形でB残留に向けた残り6試合を戦うことになった。

 ちなみに、アンドレア・マンチーニは、父が監督を務めていた当時のインテル育成部門で育ち、その後、父が指揮を執ったマンチェスター・シティのリザーブチームと契約。その後にスペイン、ハンガリー、アメリカのクラブを渡り歩いた末、17年に現役を引退し、強化スタッフの道に入った。

 ラドリッツァーニとマンフレーディが共同オーナーとなった昨シーズンは、レグロッターリエSDのアシスタントを務めていたが、昨夏のSD交代に伴って退団。今シーズンはバルセロナでボージャン・クルキッチとともにデコSDのアシスタントを務めていた。
 
 しかし、クラブレジェンドであるマンチーニの威光に頼って起死回生のB残留を目指した「最後のあがき」も、サンプドリアを混迷から救い出すことはできなかった。エバーニ就任直後にチッタデッラとの直接対決に勝って、降格ゾーンの18位から降格プレーオフゾーンの16位へと一段階這い上がり、続く4試合も1勝2分け1敗で乗り切って16位のまま最終節を迎えたまでは良かった。

 ところが、勝てば自力残留が決まるはずだったユーベ・スタビア戦は、精彩を欠いた戦いぶりで0ー0の引き分け止まり。順位表で下にいたサレルニターナとフロジノーネが勝ち星を挙げたことで追い抜かれ、18位でC降格という最悪の結末を迎えてしまったのだ。

 この降格のニュースに最も敏感に反応したのは、都市ジェノバの覇権を争う宿敵ジェノアのサポーターだった。セリエBに降格した2年前には、それを「祝福」してジェノバの街を練り歩き、C降格の今回はサンプドリアの「葬式」を計画。5月18日に行なわれるジェノア対アタランタの試合後、スタジアムから街の中心であるフェラーリ広場まで「葬列」を行なうと、サポーターグループのインスタグラムアカウントに掲載された「死亡広告」を通して告知している。

 セリエCに降格したサンプドリアの未来には、大きな暗雲が立ちこめている。シンガポールに本拠を置く「影のオーナー」が、クラブの今後に(とりわけ資金面で)どれだけコミットするのかはまだ不透明だ。さらにシーズン最終盤に加わった「マンチーニ一派」の面々が今後も残るのか、マンチーニが今後どのような形でサンプドリアに関わるのかも、現時点ではまったく分からない。マンチーニは15日に地元紙のインタビューに応じているが、そこでは「まだマンフレーディとは接点を持っていない」と語っている。

 1946年にサンピエルダレネーゼ、アンドレア・ドリアという2つのクラブが合併して誕生してから、ちょうど80周年を迎える来シーズン。サンプドリアがどのような体制でセリエCに臨むことになるのかが明らかになるまでは、もう少し時間が必要なようだ。

文●片野道郎

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