「2010年のジョゼ・モウリーニョは、見事にこの状況を乗り切った。彼は当時、すでにレアル・マドリーと合意、それをインテル会長のマッシモ・モラッティにも伝えていた。しかし彼は、選手を『一緒に最高のエンディングを描こう』と鼓舞。結果、インテルは３冠を成し遂げ、CL決勝後に彼がマルコ・マテラッツィと涙の抱擁を交わした光景は、今も人々の記憶に刻まれている。その直後、チームのバスではなく、フロレンティーノ・ペレス会長の車に乗って去ったにもかかわらず、それは“美しい別れ”として受け止められた」

　そして同メディアは、「しかし、今回は違った。インザーギは、これを実現できなかった。もちろん、ミュンヘンでの決勝であれほど精彩を欠いたのには、複数の理由があるはずだ。とはいえ、『チームが精神的にバラバラだった』という事実は、否定しようがない」と指摘し、49歳の指揮官の“責任”を追及した。

「現代の監督は、テクノロジーと専門スタッフに支えられ、戦術や最適な布陣を考えることができる。しかし最終的に勝敗を分けるのは、監督の人格、チームマネジメント、そして心理的な統率力なのだ。そして今回の敗因の核心も、まさにそこにあったのだろう」
  　同メディアは、1960～70年代に活躍したインテル＆イタリア代表のレジェンドFWであるロベルト・ボニンセーニャの「これは悲しい話だ。プロのやることではない。あれほど重要な試合を控えた直前に、監督がすでに他のクラブと契約していたなんて、到底受け入れられない。インザーギはせめて、前もってクラブに知らせておくべきだった。サウジからのオファーを受けたこと自体は誰も非難はしないし、今の時代、シーズン終了前に移籍先を決めるなんて珍しくもない。しかし、それとこれは別の話だ」とのコメントを紹介している。

　前出のカルサダCEOは、「我々は今季、国内リーグで２位という結果に終わり、目標には届かなかった。彼には、我々が再びリーグの頂点に返り咲けるよう導いてくれることを期待している。（クラブワールドカップについても）我々は、レアル・マドリーの選手とユニホーム交換するためにアメリカに行くわけでも、ただ注目されたいわけでもない。才能ある選手を擁し、さらに世界的に名の知れた新監督を迎えた今、最大限の野心を持ってこの大会に臨む」と、インザーギに対して大きな期待を寄せた。

　しかし一方で、アル・ヒラルはクラブW杯開幕までに予定していたビクター・オシムヘン、テオ・エルナンデズ、ダルウィン・ヌニェスといった大物選手の補強を何ひとつ実現できず、「武器のない将軍」（サウジの日刊紙『Al Watan』より）として初陣に臨むことを強いられるが、母国からは「騙した」「裏切った」という厳しい視線を向けられてのインザーギの新たなキャリアは、果たしていかなるものとなるだろうか。

構成●THE DIGEST編集部

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