イタリア代表監督に就任したジェンナーロ・ガットゥーゾに対しては、選手時代からの彼のトレードマークでもある旺盛な闘争心が、危機にある現在の「アッズーリ」を良い方向に牽引してくれるのではないか、との期待が多く寄せられているようだ。

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　2006年ドイツ・ワールドカップで彼とともに栄光のメンバーのひとりとなったルカ・トニは「リーノ（愛称）はどんな役割にも完璧にフィットする」と太鼓判を押し、かつての代表監督であるロベルト・ドナドーニは「彼が選ばれて嬉しく思う。信頼の置ける人物であることは確かだ」、そしてアルバニアやアゼルバイジャンといった代表チームの指揮を執ってきたジャンニ・デ・ビアージも「リーノは強い個性と決断力を持った人間だ」と、それぞれ新監督に賛辞を贈っている（イタリアの通信社『ANSA』より）。

　しかし、後者の２人については、ドナドーニが「ある意味で驚いた。我々が代表監督という役職に持つイメージは、もう少し別のタイプだと思う。例えば、クラウディオ・ラニエリの方がしっくりきた人も多かったのではないか」と正直に語れば、デ・ビアージは「重要なのは“キャラ”だけではない。リーノのサッカー哲学が、今の選手たちとどうマッチするかを見極めなければならない。彼は代表チームの環境を熟知しているが、だからといって彼が全ての問題を解決できる『万能薬』とは言えない」と指摘する。

『ANSA』は、「ガットゥーゾという人物の価値、代表チームへの深い愛情、そして厳しいポストに座る勇気を、誰も疑ってはいない。しかし、イタリア代表の新監督に就任するというこの人事は、サッカー界全体に賛否を巻き起こしている。『人』としての資質は評価されている一方で、『代表監督としての選択肢としてどうか？』という点では、全員を納得させるには至っていない」と、この人事が物議を醸すものであったことを強調している。
  　イタリアの上院議長であるイニャツィオ・ラ・ルッサ氏は、公共放送局『Radio Rai』の番組に出演した際、「FIGC（イタリア・サッカー連盟）のガブリエレ・グラビーナ会長は、ガットゥーゾを『我々のサッカー界の象徴』と呼んだが、それは正確とは言えない。もし象徴と言える人物がいるなら、それはジャンルイジ・ブッフォンだ。おそらく今回の決定の背後にも彼がいたのだろう。だったら、ブッフォンをそのまま代表監督にすれば良かった」と、異論を唱えた（スポーツ紙『Gazzetta dello Sport』より）。

　これは、日刊紙『LA SICILIA』が報じたように、代表選手団長を務めるブッフォンが、今回のガットゥーゾ起用に大きな影響力を示したことを指している。同メディアによれば、ラニエリの辞退の後、グラビーナ会長はロベルト・マンチーニの復帰を画策し、EURO2020の優勝監督は2023年の突然の辞任を後悔して謝罪の意を示した他、ジャンルイジ・ドンナルンマら選手もこれを受け入れたというが、カルチョの伝説的な守護神は自身の辞任をちらつかせて、これに猛反対し、かつての盟友を猛プッシュしたとのことである。

　ラ・ルッサ議長は続けて、「我々のサッカーの象徴とは、監督経験はなくてもフランチェスコ・トッティやアレッサンドロ・デル・ピエロのような存在だ。他にもファビオ・カンナバーロ、アレッサンドロ・ネスタ、フィリッポ・インザーギらがいる。ガットゥーゾを『象徴』として持ち上げるのは違う。我々のサッカーは『リンギオ（＝ガットゥーゾの別の愛称）型』ではなく、ジャンニ・リベラ、ロベルト・バッジョ、デル・ピエロ、そしてワルテル・ゼンガのようなタイプのサッカーだ。なぜ、ゼンガではなかったのか？」と訴えている。