ガスペリーニのチーム構想は、アタランタ時代と同じマンツーマンベースの3-4-2-1。自身の一番弟子というべきイバン・ユリッチ(新シーズンはガスペリーニの後任としてアタランタの監督に就任)が、昨シーズン導入を試みて失敗に終わったスタイルだけに、それを改めてチームにどう定着させて機能させるのか、指揮官の手腕に注目が集まるところだ。陣容的にはまだ補強の途上ではあるが、現時点で想定できる基本フォーメーションは次のようになるだろう。
GK:スビラール
DF:ゼキ・チェリク(アブドゥルハミド)、マンチーニ(クンブッラ)、エンディカ(エルモソ)
MF:ウェズレイ?(サーレマーケルス、レンス)、クリスタンテ(エル・アイナウィ)、コネ(ピジッリ)、アンヘリーニョ(サラー=エディン)
OMF:ディバラ(ソウレ)、バルダンツィ(ペッレグリーニ、エル・シャーラウィ)
FW:ドフビク(ファーガソン?)
昨シーズンの好パフォーマンスで国内外の有力クラブが獲得を狙っていたGKミル・スビラールが、2030年まで契約を延長して残留を決めたのは朗報だ。3バックの最終ラインは、昨シーズンの最終形となったメフメト・ゼキ・チェリク、ジャンルカ・マンチーニ、エバン・エンディカが、今のところ基本となっている。マンチーニはアタランタ時代にガスペリーニの下でプレーしており、戦術理解度は十分だ。
中央よりもサイドを多用して攻撃を展開するガスペリーニのサッカーにおいて、戦術的な鍵を握るのが左右のWB。左にはフェデリコ・ディマルコ(インテル)と並んでビルドアップからフィニッシュまでに渡る攻撃への貢献度でセリエA指折りと言えるアンヘリーニョを擁しており、引き続き重要な役割を担うはずだ。時宜には先のクラブW杯でもそのタレントの一端を披露したブラジル人のウェズレイ(フラメンゴ)の獲得が濃厚になっており、移籍成立が期待される。
攻守のバランサーとして重要な機能を担う中盤センターは、強靭なフィジカルと戦術センスを合わせ持ったフランス代表マヌ・コネが柱か。やはりアタランタ時代にガスペリーニの下でプレーしたブライアン・クリスタンテ、昨シーズン一気に台頭した生え抜きの若手ニッコロ・ピジッリ(運動量とクオリティーを合わせ持ち、すでにイタリアA代表にも招集済み)、そして高い攻撃性能も備えエデルソン(アタランタ)を彷彿させる新戦力ニール・エル・アイナウィと、人材は揃っている。
前線はやはりチーム随一のタレントを誇る10番パウロ・ディバラが鍵。ガスペリーニは「ディバラは今のままのディバラでいてくれればそれでいい。重要なのは良好なコンディションを保つこと」と語っており、重用していく意向を明らかにしている。同じ左利きのアルゼンチン人でよりドリブラー色が強いマティアス・ソウレとは、両立よりは併用が基本線になりそうだ。
彼ら2人が右トップ下なら、左は若いトンマーゾ・バルダンツィ、故障がちで不本意なシーズ運を送った主将ロレンツォ・ペッレグリーニがポジションを争うことになりそう。やや手薄な感じもあるだけに、開幕までにはもう1枚くらい補強があってもおかしくはない。
最前線のCFは、昨シーズン本領を発揮し切れなかったアルテム・ドフビクに加え、ブライトンからエバン・ファーガソンをレンタルする見通しが濃厚になっている。22~24シーズンにロベルト・デ・ゼルビ監督の下でプレーしたが、その後は怪我もあって伸び悩んでおり、昨シーズンはウェストハムにレンタルされるも完全復活には至らなかった。とはいえ、フィニッシュワークに加えて強度の高いプレッシングで守備にも大きな貢献を果たせるだけに、指揮官がフィニッシュ特化型のドフビクとファーガソンのどちらを柱に据えるかも注目点のひとつだ。
新シーズンの目標は、欧州カップ戦出場権が保証される6位以内がノルマ、CL出場権(4位以内)に手が届けば文句なしだろう。ガスペリーニ監督はこう語っている。
「私のチームは常にリーグで最も得点力のあるチームのひとつだった。これは私のサッカーの特徴であり、ローマでも当然再現したいと思っている。順位的には、CL出場権が望み得る最大の成果だろう。現時点でスクデットは現実的な目標ではない。もちろん先のことは誰にもわからない。私自身の目標はチームをより強くすること、より多くの代表クラス、国際レベルの選手を育てること、そしてチームに継続性をもたらす中核的な選手層を築くことだ。そうすれば翌年はさらにいい選手を獲得できるようになるだろう」
新シーズンのセリエAは、トップ10のうち優勝したナポリ、9位ボローニャ、10位コモを除く7チームが実質的な新体制による再スタートを切る格好になっている。その中でどこが新プロジェクトをいち早く軌道に乗せるかで、シーズンの流れが決まることになるだろう。「キャリア最後の挑戦」に臨むガスペリーニの手腕に注目したい。
文●片野道郎
【記事】キブ新体制で再出発のインテル、トゥドル監督を続投させたユベントス、クラブW杯で見せたチーム作りの注目ポイント【現地発コラム】
【記事】イタリア代表新監督ガットゥーゾは、「帰属意識」「結束」「ファミリー」を柱に「敵陣でボールを保持し、ゴールを奪うチーム」を目指す【現地発コラム】
GK:スビラール
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OMF:ディバラ(ソウレ)、バルダンツィ(ペッレグリーニ、エル・シャーラウィ)
FW:ドフビク(ファーガソン?)
昨シーズンの好パフォーマンスで国内外の有力クラブが獲得を狙っていたGKミル・スビラールが、2030年まで契約を延長して残留を決めたのは朗報だ。3バックの最終ラインは、昨シーズンの最終形となったメフメト・ゼキ・チェリク、ジャンルカ・マンチーニ、エバン・エンディカが、今のところ基本となっている。マンチーニはアタランタ時代にガスペリーニの下でプレーしており、戦術理解度は十分だ。
中央よりもサイドを多用して攻撃を展開するガスペリーニのサッカーにおいて、戦術的な鍵を握るのが左右のWB。左にはフェデリコ・ディマルコ(インテル)と並んでビルドアップからフィニッシュまでに渡る攻撃への貢献度でセリエA指折りと言えるアンヘリーニョを擁しており、引き続き重要な役割を担うはずだ。時宜には先のクラブW杯でもそのタレントの一端を披露したブラジル人のウェズレイ(フラメンゴ)の獲得が濃厚になっており、移籍成立が期待される。
攻守のバランサーとして重要な機能を担う中盤センターは、強靭なフィジカルと戦術センスを合わせ持ったフランス代表マヌ・コネが柱か。やはりアタランタ時代にガスペリーニの下でプレーしたブライアン・クリスタンテ、昨シーズン一気に台頭した生え抜きの若手ニッコロ・ピジッリ(運動量とクオリティーを合わせ持ち、すでにイタリアA代表にも招集済み)、そして高い攻撃性能も備えエデルソン(アタランタ)を彷彿させる新戦力ニール・エル・アイナウィと、人材は揃っている。
前線はやはりチーム随一のタレントを誇る10番パウロ・ディバラが鍵。ガスペリーニは「ディバラは今のままのディバラでいてくれればそれでいい。重要なのは良好なコンディションを保つこと」と語っており、重用していく意向を明らかにしている。同じ左利きのアルゼンチン人でよりドリブラー色が強いマティアス・ソウレとは、両立よりは併用が基本線になりそうだ。
彼ら2人が右トップ下なら、左は若いトンマーゾ・バルダンツィ、故障がちで不本意なシーズ運を送った主将ロレンツォ・ペッレグリーニがポジションを争うことになりそう。やや手薄な感じもあるだけに、開幕までにはもう1枚くらい補強があってもおかしくはない。
最前線のCFは、昨シーズン本領を発揮し切れなかったアルテム・ドフビクに加え、ブライトンからエバン・ファーガソンをレンタルする見通しが濃厚になっている。22~24シーズンにロベルト・デ・ゼルビ監督の下でプレーしたが、その後は怪我もあって伸び悩んでおり、昨シーズンはウェストハムにレンタルされるも完全復活には至らなかった。とはいえ、フィニッシュワークに加えて強度の高いプレッシングで守備にも大きな貢献を果たせるだけに、指揮官がフィニッシュ特化型のドフビクとファーガソンのどちらを柱に据えるかも注目点のひとつだ。
新シーズンの目標は、欧州カップ戦出場権が保証される6位以内がノルマ、CL出場権(4位以内)に手が届けば文句なしだろう。ガスペリーニ監督はこう語っている。
「私のチームは常にリーグで最も得点力のあるチームのひとつだった。これは私のサッカーの特徴であり、ローマでも当然再現したいと思っている。順位的には、CL出場権が望み得る最大の成果だろう。現時点でスクデットは現実的な目標ではない。もちろん先のことは誰にもわからない。私自身の目標はチームをより強くすること、より多くの代表クラス、国際レベルの選手を育てること、そしてチームに継続性をもたらす中核的な選手層を築くことだ。そうすれば翌年はさらにいい選手を獲得できるようになるだろう」
新シーズンのセリエAは、トップ10のうち優勝したナポリ、9位ボローニャ、10位コモを除く7チームが実質的な新体制による再スタートを切る格好になっている。その中でどこが新プロジェクトをいち早く軌道に乗せるかで、シーズンの流れが決まることになるだろう。「キャリア最後の挑戦」に臨むガスペリーニの手腕に注目したい。
文●片野道郎
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