“心の健康”は競技力を支える大切な土台となる――そうした考え方が数々のトップ選手たちの声を通じて、テニス界に確実に広がりつつある。事実近年のテニスツアーでは記者会見をはじめとした公の場で、メンタルヘルスに関する多くの発言がなされている。
女子現7位のアマンダ・アニシモワ(アメリカ)は「燃え尽き症候群」(仕事に対する意欲や熱意を急激に失ってしまう状態)を理由に2023年5月から約8カ月間ツアーを離脱。また今年6月の全仏オープンでは男子現8位のアレックス・デミノー(オーストラリア)が2回戦敗退を喫した直後の会見で過密スケジュールによる心の不調を明かしていた。
すでに夏の北米ハードコートシリーズを迎え、シーズンも終盤に差し掛かっているプロテニスツアー。現在は男女ともにカナダで「ナショナルバンク・オープン」(男子はトロント、女子はモントリオール/ATP1000・WTA1000)が行なわれているが、それぞれ開幕前に選手のメンタルヘルスに光を当てたフォーラムが開催され、テニス界で心の健康が大きく取り上げられている現状について、2人のトップ選手が自身の考えを述べたという。
ベスト16に進出した男子元2位のキャスパー・ルード(ノルウェー/現13位)は過去に心理士に相談した経験をもとに、次のように語っている。
「心理士と話すのはとても良い経験でした。フィットネスを鍛えるためにパーソナルトレーナーとジムに行くように、心理士と会話をするというのは、精神面を鍛えるようなものです。脳を鍛えたり、思考を整理したり、新しいモチベーションを見出だしたりするのに役立ちました」
「元々メンタルヘルスについては声を上げようとは思っていなかったのですが、今は自然とそれについて話せる時代になってきています。もし困っていたり、誰かに相談すべきか迷っている人がいたりしたら、ぜひ僕がやったようなケアを試してみてほしいと伝えたかったのです。僕自身は本当にメンタルケアの効果はありました」
一方、ディフェンディングチャンピオンとして参戦したもののまさかの3回戦敗退を喫した女子現4位のジェシカ・ペグラ(アメリカ)は、SNSでの誹謗中傷が選手のメンタルヘルスに悪影響を与えていると主張した。
「多くの人は、私たちがどれほどひどいメッセージを受け取っているかを知りません。そこには勝敗が関係ないという皮肉な現実もあります。アスリートとしてはそれに対しても強い心を持たなければなりませんが、もはやそれだけでは足りません。選手自身がオンラインツールでの行動を変える必要がありますし、ネガティブなコメントをブロックする、大会期間中はコメント機能をオフにするなどの対策が求められます」
なお今回のフォーラムではWTA(女子プロテニス協会)財団とATP(男子プロテニス協会)が運営する社会貢献プログラムが、それぞれ1万ドル(約147万円)を「カナダ・メンタルヘルス・スポーツセンター」に寄付したとのことだ。心の健康が競技力を左右する重要な要素である以上、こうした取り組みが一過性のものに終わることなく、今後さらに広がりと深みをもって継続されていくことを願いたい。
文●中村光佑
【動画】「ナショナルバンク・オープン」大会7日目のハイライト(※ルードは4:53から)
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すでに夏の北米ハードコートシリーズを迎え、シーズンも終盤に差し掛かっているプロテニスツアー。現在は男女ともにカナダで「ナショナルバンク・オープン」(男子はトロント、女子はモントリオール/ATP1000・WTA1000)が行なわれているが、それぞれ開幕前に選手のメンタルヘルスに光を当てたフォーラムが開催され、テニス界で心の健康が大きく取り上げられている現状について、2人のトップ選手が自身の考えを述べたという。
ベスト16に進出した男子元2位のキャスパー・ルード(ノルウェー/現13位)は過去に心理士に相談した経験をもとに、次のように語っている。
「心理士と話すのはとても良い経験でした。フィットネスを鍛えるためにパーソナルトレーナーとジムに行くように、心理士と会話をするというのは、精神面を鍛えるようなものです。脳を鍛えたり、思考を整理したり、新しいモチベーションを見出だしたりするのに役立ちました」
「元々メンタルヘルスについては声を上げようとは思っていなかったのですが、今は自然とそれについて話せる時代になってきています。もし困っていたり、誰かに相談すべきか迷っている人がいたりしたら、ぜひ僕がやったようなケアを試してみてほしいと伝えたかったのです。僕自身は本当にメンタルケアの効果はありました」
一方、ディフェンディングチャンピオンとして参戦したもののまさかの3回戦敗退を喫した女子現4位のジェシカ・ペグラ(アメリカ)は、SNSでの誹謗中傷が選手のメンタルヘルスに悪影響を与えていると主張した。
「多くの人は、私たちがどれほどひどいメッセージを受け取っているかを知りません。そこには勝敗が関係ないという皮肉な現実もあります。アスリートとしてはそれに対しても強い心を持たなければなりませんが、もはやそれだけでは足りません。選手自身がオンラインツールでの行動を変える必要がありますし、ネガティブなコメントをブロックする、大会期間中はコメント機能をオフにするなどの対策が求められます」
なお今回のフォーラムではWTA(女子プロテニス協会)財団とATP(男子プロテニス協会)が運営する社会貢献プログラムが、それぞれ1万ドル(約147万円)を「カナダ・メンタルヘルス・スポーツセンター」に寄付したとのことだ。心の健康が競技力を左右する重要な要素である以上、こうした取り組みが一過性のものに終わることなく、今後さらに広がりと深みをもって継続されていくことを願いたい。
文●中村光佑
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