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ドーピング問題で解雇したトレーナーを再招聘したシナー「自分の身体をよく知る人が必要」と理由を説明<SMASH>

中村光佑

2025.08.17

「今は全ての状況が変わった」。ドーピング問題の発端となったトレーナーを再雇用したシナーが、その理由について語った。(C)Getty Images

 現在開催中の男子テニスツアー公式戦「シンシナティ・オープン」(8月7日~18日/アメリカ・シンシナティ/ハードコート/ATP1000)に出場している世界ランキング1位のヤニック・シナー(イタリア)が、自身のドーピング問題を受けて昨年8月末に解雇したトレーナーのウンベルト・フェラーラ氏を先日チームに再招聘したことについて言及した。

 問題の発端は、シナーの元理学療法士であるジャコモ・ナルディ氏が自身の傷を治療するために禁止薬物「クロステボル」を含んだスプレーを肌に塗り、その手でシナーにマッサージ等を施したことだった。そのスプレーをナルディ氏に提供したのが、当時トレーナーを務めていたフェラーラ氏だったとされている。

 テニスの不正行為を監視する第三者機関「ITIA」は、「選手本人に不正の意図はなかった」として、昨年3月に2度にわたりクロステボルへの陽性反応を示したシナーをいったんは無罪としたが、世界反ドーピング機関(WADA)がこの判決を不服とし、スポーツ仲裁裁判所(CAS)に上訴。当初最終審理は今年4月に実施される予定だったが、一足早く2月にWADAとシナー側との合意が成立し、結果的に同選手は3カ月の出場停止処分を経て5月にツアーに復帰した。

 一方でナルディ氏とフェラーラ氏には特に処分は科されなかった。伊メディア『Corriere della Sera』が今年2月に報じたところによれば、ITIAの調査対象はあくまで違反が発覚した選手本人であり、ナルディ氏とフェラーラ氏についてはイタリアの反ドーピング機関の裁量に委ねられたが、最終的には「故意ではなかった」と判断され、2人への綿密な調査は行なわれなかったとのことだ。
 
 シナーはナルディ氏とフェラーラ氏を解雇した直後にノバク・ジョコビッチ(セルビア/7位)の元スタッフであるトレーナーのマルコ・パニチ氏と理学療法士のウリセス・バディオ氏をチームに迎え入れたが、三者は今年6月中旬に離別。そして先月にはフェラーラ氏を再招聘したが、これについてはあまり公には語ってこなかった。

 シナーがフェラーラ氏との再タッグについて初めて詳しく語ったのは、現地14日に行なわれたシンシナティOP準々決勝後のこと。フェリックス・オジェ-アリアシム(カナダ/28位)に6-0、6-2で完勝した直後の会見で次のようにコメントした。

「あの時とは違い、今は全ての状況が変わった。改めて自分の身体をよく理解している人が必要だと感じたんだ。ウンベルトとは2年間一緒にやってきたし、その間に多くの恩恵を受けた。事実、彼は身体全体の可動性や安定性に加えて持久力も改善してくれたし、素晴らしい仕事をしてくれていた。マルコとも良い関係だったけど、最適な選択ではなかったのだろうと思っていた。一方でウンベルトには常に相性の良さを感じていたんだ」

 16日には24歳の誕生日を迎えたシナー。絶大な信頼を置くフェラーラ氏との再タッグでさらなる飛躍を期待したい。

文●中村光佑

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