メインの会見室に現れた彼女は、どこか浮かない表情だった。
試合の感想を問われても、「あまり良いプレーができなかった」と小首をかしげる。もっとも、第15シードのダリア・カサキナ(オーストラリア/世界ランキング18位)相手に勝ったのだから、数字的には喜んでも良い結果。それで彼女が納得していないのは、完璧主義者ゆえか。あるいは、次の対戦相手を想定した上だろうか。
大坂なおみ(同24位)が全米オープンテニスの4回戦で対戦するのは、ココ・ガウフ(アメリカ/同3位)。大会第3シードにして、2023年の全米、そして今年6月の全仏オープン優勝者である。
6-0、4-6、6-3のスコアが示すように、大坂とカサキナとの試合は、浮き沈みの激しい混戦となる。前日に、持病の“片頭痛”に悩まされていたというカサキナは、立ち上がりからダブルフォールトを連発。ストロークやフットワークにも、本来の切れ味が見られぬまま6ゲームが流れ去った。
だが第2セットに入ると突如、カサキナが息を吹き返す。フォアハンドの当たりが良くなり、スピンの効いたショットで大坂を左右に走らせた。ストロークが伸びればサービスも入り、サービスが決まればストロークのリズムも良くなる好循環。
対する大坂は、急転換した流れに苛立ちを隠せない。第2セットは、終始ブレークで先行したカサキナの手に渡った。
ここで大坂は、長いトイレットブレークを取る。そうしてコートに戻ってきた時、彼女は気持ちを切り替えた様子だった。第3セットは、ラブゲームキープで好発進。第4ゲームを相手のダブルフォールトにも乗じてブレークすると、大歓声がスタジアムを震わせた。マッチポイントは、フォアのスイングボレー。ネットをかすめコードボールとなった幕引きが、この日の試合を象徴するようでもあった。
4回戦のガウフとの対戦を控え大坂は、6年前の初対戦を回想する。当時のガウフは、15歳。対戦の舞台は、この全米オープンのセンターコート。6-3、6-0で大坂が勝った試合内容以上に、涙にくれるガウフを大坂が説得し、二人でオンコートインタビューを受けた光景の方が、人々の記憶に焼き付いているだろう。
「あの時から、彼女(ガウフ)は素晴らしい選手になると思っていた。その予想は、当たったわね」
そう笑う大坂は、「15歳の時点で、彼女は既に状況に適応し自分を律していた。もっと強くなって戻ってくると思っていた」と言った。
一方のガウフは、6年前のあの試合が、いかに辛い記憶だったかを明かす。
「とても厳しい瞬間だった。すごく注目された試合だったので、必要以上のプレッシャーを自分にかけていたと思う。自分を信じる以上に、『やらなくてはいけない』と追い込みすぎてしまった」
 
その初対戦を含めて両者は5度対戦し、ガウフが3勝2敗で僅かにリード。直近は昨年10月のチャイナオープンで、両者セットを分け合った時点で、大坂が腰の痛みを理由に棄権している。
大坂が予見した通り、今のガウフは2度のグランドスラム優勝者にして、女子テニス界の顔に成長。対する大坂は、4度のグランドスラム優勝者であり、今や一児の母でもある。
立場を大きく変えた二人の再戦は、いかなる結末を迎えるのか? 確かなのは、あの時以上の熱狂の中で、恐らくは6年前と同じ舞台で繰り広げられるということだ。
現地取材・文●内田暁
【画像】大坂なおみほか、2025全米オープンを戦う女子トップ選手たちの厳選フォト
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            試合の感想を問われても、「あまり良いプレーができなかった」と小首をかしげる。もっとも、第15シードのダリア・カサキナ(オーストラリア/世界ランキング18位)相手に勝ったのだから、数字的には喜んでも良い結果。それで彼女が納得していないのは、完璧主義者ゆえか。あるいは、次の対戦相手を想定した上だろうか。
大坂なおみ(同24位)が全米オープンテニスの4回戦で対戦するのは、ココ・ガウフ(アメリカ/同3位)。大会第3シードにして、2023年の全米、そして今年6月の全仏オープン優勝者である。
6-0、4-6、6-3のスコアが示すように、大坂とカサキナとの試合は、浮き沈みの激しい混戦となる。前日に、持病の“片頭痛”に悩まされていたというカサキナは、立ち上がりからダブルフォールトを連発。ストロークやフットワークにも、本来の切れ味が見られぬまま6ゲームが流れ去った。
だが第2セットに入ると突如、カサキナが息を吹き返す。フォアハンドの当たりが良くなり、スピンの効いたショットで大坂を左右に走らせた。ストロークが伸びればサービスも入り、サービスが決まればストロークのリズムも良くなる好循環。
対する大坂は、急転換した流れに苛立ちを隠せない。第2セットは、終始ブレークで先行したカサキナの手に渡った。
ここで大坂は、長いトイレットブレークを取る。そうしてコートに戻ってきた時、彼女は気持ちを切り替えた様子だった。第3セットは、ラブゲームキープで好発進。第4ゲームを相手のダブルフォールトにも乗じてブレークすると、大歓声がスタジアムを震わせた。マッチポイントは、フォアのスイングボレー。ネットをかすめコードボールとなった幕引きが、この日の試合を象徴するようでもあった。
4回戦のガウフとの対戦を控え大坂は、6年前の初対戦を回想する。当時のガウフは、15歳。対戦の舞台は、この全米オープンのセンターコート。6-3、6-0で大坂が勝った試合内容以上に、涙にくれるガウフを大坂が説得し、二人でオンコートインタビューを受けた光景の方が、人々の記憶に焼き付いているだろう。
「あの時から、彼女(ガウフ)は素晴らしい選手になると思っていた。その予想は、当たったわね」
そう笑う大坂は、「15歳の時点で、彼女は既に状況に適応し自分を律していた。もっと強くなって戻ってくると思っていた」と言った。
一方のガウフは、6年前のあの試合が、いかに辛い記憶だったかを明かす。
「とても厳しい瞬間だった。すごく注目された試合だったので、必要以上のプレッシャーを自分にかけていたと思う。自分を信じる以上に、『やらなくてはいけない』と追い込みすぎてしまった」
その初対戦を含めて両者は5度対戦し、ガウフが3勝2敗で僅かにリード。直近は昨年10月のチャイナオープンで、両者セットを分け合った時点で、大坂が腰の痛みを理由に棄権している。
大坂が予見した通り、今のガウフは2度のグランドスラム優勝者にして、女子テニス界の顔に成長。対する大坂は、4度のグランドスラム優勝者であり、今や一児の母でもある。
立場を大きく変えた二人の再戦は、いかなる結末を迎えるのか? 確かなのは、あの時以上の熱狂の中で、恐らくは6年前と同じ舞台で繰り広げられるということだ。
現地取材・文●内田暁
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