海外テニス

ツアーで進む球足の低速化に選手らが意見。ズベレフは「多様性を取り戻す必要がある」、シナーは「適応してベストを尽くだけ」<SMASH>

スマッシュ編集部

2025.10.06

ツアーで進む球足の低速化がテニス界で議論に。大会ごとの特色が失われつつある現状に、ズベレフ(左)、シナー(右)らトップ選手たちが意見を述べた。(C)Getty Images

 中国・上海で開催中の「ロレックス上海マスターズ」(10月1日~12日)で、アレクサンダー・ズベレフ(ドイツ/世界ランキング3位)がツアー全体のコートの球足について苦言を呈した。運営側が意図的にサーフェスを遅くしているのではないかと指摘し、「テニスに多様性を取り戻す必要がある」と訴えた。

 ズベレフは試合後のオンコートインタビューでこう主張した。

「どの大会も同じなのは嫌いだ。トーナメントディレクターたちはヤニック(・シナー)とカルロス(・アルカラス)がどの大会でもうまくいくように、その方向に進んでいる。彼らがそれを望んでいるからだ」

 ツアーを12年戦ってきた彼は、かつては大会ごとにサーフェスの特色があり、「好きな大会と、あまり得意でない大会があった」と言う。そしてこう主張した。

「今では芝、ハード、クレーのどこでもほぼ同じようなテニスができる。僕はそれが好きじゃない。テニスにはゲームスタイルが必要で、もっと多様性が求められる」

 近年のツアーで進む"球足の画一化"への懸念については、ロジャー・フェデラー氏(スイス/元世界1位)も警鐘を鳴らしていた。

 9月の「レーバーカップ」期間中に出演したポッドキャスト番組で、フェデラー氏は「コートの球足については、トーナメントの運営に携わる人たちが改善していく必要がある。ただ、単に速いコートを用意するだけでは十分ではない。我々はアルカラスやシナーが超高速の条件でどうプレーするかを見たうえで、両者の試合を超スローな球足のコートでも行ない、どのように結果が変わるかを見たい」と語っていた。
 
 さらに、サーフェスが選手の個性に与える影響にも言及した。

「選手の個性がなくなったのは、トーナメントの運営者が毎週ボールとコートの速さをほとんど同じにしてしまっているからだろう。だから今は全仏オープンもウインブルドンも全米オープンも、全て同じプレースタイルで通用してしまうわけだ」

 サーフェスごとに輝く特徴が異なるのもテニスの面白さの1つ。彼の言葉は、それが失われつつあることへの危機感の表れだ。では、世代の異なる2人のトッププレーヤーから名指しされた本人は、どう考えるのか。

 同大会で取材を受けたシナーはこう答えた。

「僕とカルロスがコートを作っているわけじゃない。僕らはどんな状況にも適応しようとしていて、それでも毎週少しずつ違いがあると感じている。速いコートでも良いプレーをしてきた。だから、ただ適応してベストを尽くす、それだけだ」

 球足をめぐる議論は、今後もツアー運営にとって大きなテーマになりそうだ。

構成●スマッシュ編集部

【動画】ズベレフ、シナーら出場の「ロレックス上海マスターズ」大会4日目のハイライト

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