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「特定の選手に有利な大会を作ることはない」選手からの指摘が続く球足の低速化にトーナメントディレクターが反論<SMASH>

スマッシュ編集部

2025.10.12

球足が速いとされるシンシナティ・オープンでも、今年の男子シングルス決勝に勝ち上がったのはシナーとアルカラスだった。(C)Getty images

 シンシナティで開催されるATPおよびWTA大会を運営するボブ・モラン氏が、ツアー内外から批判の声が上がっている球足の低速化について反論している。

 ここ最近の男子ツアーでは、カルロス・アルカラス(スペイン/世界ランキング1位)やヤニック・シナー(イタリア/同2位)といったトップ選手が決勝に上がるために、意図的にコートの球足を遅くしているのではないかという指摘が続出している。

 中国・上海での「ロレックス上海マスターズ」(10月1日~12日)に出場したアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ/同3位)は、大会中のインタビューで「トーナメントディレクターたちはヤニック(・シナー)とカルロス(・アルカラス)がどの大会でもうまくいくように、その方向(低速化)に進んでいる」とコメント。

 また、元世界ランク1位のロジャー・フェデラー氏も、9月にアンディ・ロディック氏が運営するポッドキャスト『Serve with Andy Roddick』に出演した際に「安全策としてコートを遅くするのは理解できる」と理解を示しつつも、「コートを遅くしてアルカラスやシナーの決勝進出を有利にしている」と主張。

「弱い選手がシナーに勝つためには、何本ものスーパーショットを打たなければならない。でもコートが速ければ、少しのスーパーショットで突破できるはずだ。つまり大会ディレクターはこう考えている。『決勝でシナー対アルカラスが見たいんだよね? 大会の盛り上がりにもつながるし』ってね」
 
 一方、海外メディア『TNTSPORTS』によると、モラン氏はこれらの指摘に対し「特定の選手に有利な大会を作ろうなどとは全く考えていない」と反論。「我々のコートは速いが、決勝にはシナーとアルカラスが決勝に立った。またシンシナティでこの仕事を始めてからの3年間、選手たちからは『速いコートだ』というフィードバックを受けてきた」と語った。

「今年目指したのはワシントンDCから全米オープンまでのアメリカツアー全体を通じた一貫性だ。我々は中速から高速域のコートを目指すことで一致した。目標は『一貫した速度で、一貫したボールであること』で、それが選手たちが求めていることだと聞いている」

 もちろん、速いコートであることが選手たちから完全に肯定されるわけではない。「間違いなく選手たちからは苦情が寄せられる」と語るモラン氏は、「前回はいつもよりやや速いコートだったと思う。選手からは『氷上のような、異常な速さだった』と言われたよ」と、最適なコートスピードの調整に苦慮していることを明かした。

構成●スマッシュ編集部

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