思えば、ソラナ・シルステア(ルーマニア/世界ランキング51位)の「木下グループジャパンオープン」(WTA250)は、完璧に近いプレーを見せる内島萌夏(同81位)に圧倒され、2-6で第1セットを落とす苦闘の幕開けだった。
それでも、内島曰く「第2セットから明らかに集中力をあげた」というシルステアは、数少ないチャンスをものにしていく。ジリジリと流れを手繰り寄せ、つかみ取った逆転勝利だった。
この初戦の戦いは、シルステアのキャリアを反映しているようだと言えるかもしれない。彼女が全仏オープンでベスト8入りし、注目と期待を集めたのは19歳の時。キャリア最高位の21位には、23歳で到達した。
ただそこからは、多くの浮き沈みを経験する。2015年には、244位でシーズンを終えていた。それでも翌年には、トップ100に復帰。さらに23年の全米オープンでは、同大会で初のベスト8へ躍進。24年初頭には、ランキングもキャリア最高位に肉薄する22位にまで再浮上していた。
だがその頃から、彼女は足の痛みに悩まされる。
「ウインブルドンが終わった時に、もうテニスをやめるか、あるいは手術かという厳しい二択を迫られた」
ジャパンオープン準々決勝で、ビクトリヤ・ゴルビッチ(スイス/同60位)をフルセットで退けたシルステアが、1年以上前の日々を振り返った。
「でもその時に思ったのは、『このようにケガをしたままで引退を強いられるのは嫌だ』ということ。大きな笑みを湛えて、正面扉から堂々と、自分の意志でコートを去りたいと思った」
それが「手術を決意した理由」だと、35歳を迎えたベテランは笑った。
その決断の正しさは、この夏のWTAツアー優勝、そして現在51位のランキングが物語っている。内島戦では長いラリーに持ち込み、ゴルビッチのような種々の球種を扱う「トリッキーな選手」相手には、「リスクを恐れず攻め、なるべくポイントを短くした」というテニスの幅と円熟味も今の彼女は有している。
加えるなら、ケガでコートを離れていた期間は、必ずしもネガティブなことばかりでもなかったようだ。実は昨年、彼女は「完全な観光客として、ボーイフレンドと一緒に日本を訪れていた」と明かす。
「東京と京都に行ったの! 本当は大阪もリストに入っていたけれど、10日しかなかったから諦めることになって……」
その時の良い思い出が、今回、彼女が大阪市開催のジャパンオープンに出場したいと願った、最大のモチベーションだという。実際に今大会期間中にも観光を楽しみ、ユニバーサルスタジオにまで足を伸ばしたというのだ。
「ボーイフレンドにも、『日本開催の大会は全て出るからね』って言っていた。もっと日本で、多くの大会があればいいのに!」
そう破顔する表情からは、長いツアーをも楽しむ様子が伺えた。
本来は東京開催の「東レ パン パシフィック オープン テニス」(10月20日~26日/WTA500)の予選にも出場予定だったが、今大会で勝ち進んだために、東レ予選には出られないことに。
「東京にも行きたかったので、それはちょっと残念。でも、ここで準決勝まで勝ち上がれているのは、もちろん、すごくうれしい」
念願の大阪を訪れた彼女が今望むのは、一日でも長く、勝者としてこの町に留まることだ。
取材・文●内田暁
【動画】シルステアVSゴルビッチのジャパンOP準々決勝ハイライト
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それでも、内島曰く「第2セットから明らかに集中力をあげた」というシルステアは、数少ないチャンスをものにしていく。ジリジリと流れを手繰り寄せ、つかみ取った逆転勝利だった。
この初戦の戦いは、シルステアのキャリアを反映しているようだと言えるかもしれない。彼女が全仏オープンでベスト8入りし、注目と期待を集めたのは19歳の時。キャリア最高位の21位には、23歳で到達した。
ただそこからは、多くの浮き沈みを経験する。2015年には、244位でシーズンを終えていた。それでも翌年には、トップ100に復帰。さらに23年の全米オープンでは、同大会で初のベスト8へ躍進。24年初頭には、ランキングもキャリア最高位に肉薄する22位にまで再浮上していた。
だがその頃から、彼女は足の痛みに悩まされる。
「ウインブルドンが終わった時に、もうテニスをやめるか、あるいは手術かという厳しい二択を迫られた」
ジャパンオープン準々決勝で、ビクトリヤ・ゴルビッチ(スイス/同60位)をフルセットで退けたシルステアが、1年以上前の日々を振り返った。
「でもその時に思ったのは、『このようにケガをしたままで引退を強いられるのは嫌だ』ということ。大きな笑みを湛えて、正面扉から堂々と、自分の意志でコートを去りたいと思った」
それが「手術を決意した理由」だと、35歳を迎えたベテランは笑った。
その決断の正しさは、この夏のWTAツアー優勝、そして現在51位のランキングが物語っている。内島戦では長いラリーに持ち込み、ゴルビッチのような種々の球種を扱う「トリッキーな選手」相手には、「リスクを恐れず攻め、なるべくポイントを短くした」というテニスの幅と円熟味も今の彼女は有している。
加えるなら、ケガでコートを離れていた期間は、必ずしもネガティブなことばかりでもなかったようだ。実は昨年、彼女は「完全な観光客として、ボーイフレンドと一緒に日本を訪れていた」と明かす。
「東京と京都に行ったの! 本当は大阪もリストに入っていたけれど、10日しかなかったから諦めることになって……」
その時の良い思い出が、今回、彼女が大阪市開催のジャパンオープンに出場したいと願った、最大のモチベーションだという。実際に今大会期間中にも観光を楽しみ、ユニバーサルスタジオにまで足を伸ばしたというのだ。
「ボーイフレンドにも、『日本開催の大会は全て出るからね』って言っていた。もっと日本で、多くの大会があればいいのに!」
そう破顔する表情からは、長いツアーをも楽しむ様子が伺えた。
本来は東京開催の「東レ パン パシフィック オープン テニス」(10月20日~26日/WTA500)の予選にも出場予定だったが、今大会で勝ち進んだために、東レ予選には出られないことに。
「東京にも行きたかったので、それはちょっと残念。でも、ここで準決勝まで勝ち上がれているのは、もちろん、すごくうれしい」
念願の大阪を訪れた彼女が今望むのは、一日でも長く、勝者としてこの町に留まることだ。
取材・文●内田暁
【動画】シルステアVSゴルビッチのジャパンOP準々決勝ハイライト
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