海外テニス

トップ選手の負担軽減へ――マスターズで“1・2回戦免除”となる「2つのBYE」導入を、ATP会長が検討中と明言<SMASH>

中村光佑

2025.11.16

ATP会長のガウデンツィ氏は(写真左上)は、パリ大会(写真)をはじめとするマスターズ1000で、トップ選手の負担軽減を目的とした“1・2回戦免除”を含む新制度を協議中であると明かした。(C)Getty Images

 男子テニスツアーを統括するATP(男子プロテニス協会)は、プロテニスを新たな高みに導くことを目標とする「One Visionプロジェクト」の一環で、2023年シーズンから一部マスターズ1000大会の開催期間およびドロー数を従来の8日間・56ドローから12日間・96ドローに拡大している。だがこれにより近年はツアースケジュールが過密化の一途をたどっており、中でも出場義務が課せられるトップ選手からは批判の声が相次いでいる。

 今やマスターズの9大会中7大会がこの新フォーマットで開催されており、現状では32のシード選手に1回戦のBYE(免除)が与えられている。しかしこの方式には「アーリーラウンドの盛り上がりに欠ける」、「トップ選手が連戦続きになり、休養の時間が確保できなくなる」など問題点も多く、長く議論されながら、決定的な解決策が見つからずにいた。

 そこで現在、ATPはマスターズに出場するトップ選手が大方満足できるよう、様々な改革案を検討しているようだ。1回戦と2回戦の「2つのBYE」の導入はそのひとつであり、それを適用するにはドロー構成や賞金並びにランキングポイント配分の調整が必須となる。

 先日伊テニスメディア『UBITENNIS』で記者を務めるウバルド・スカナガッタ氏が、ATPのアンドレア・ガウデンツィ会長(イタリア/52歳)に「トップ選手に2つのBYEを与えて、3回戦から出場できるようにする案を考えたことは?」と質問したところ、驚くべきことに同会長は「その案は現在ATP内部で検討されている」と認めたのだ。
 
 この改革案が注目されている理由の一つは、選手自らが3回戦から出場するか否かを選べる「任意制」での導入を基軸としている点。すなわち2つのBYEを選択した場合は、当然ながら1・2回戦で付与されるポイントと賞金は放棄することになる。対して1回戦からプレーする選択をすれば、従来通りのポイントと賞金を受け取れる仕組みだ。

 マスターズ1000は改革からわずか2年ほどで1,830万ドル(約27億円)もの莫大な利益がもたらされたこともあり、ガウデンツィ会長としては同カテゴリー大会の「2週間開催」は崩したくない様子。そうした中で「選手の負担軽減」と「競技の公平性」の双方を両立すべく、「2つのBYEの導入」が改革案に挙がったという。

 ただ現行の「32シードの1回戦免除」がどう整理されるのかなど、上記の新案についてはまだ不透明な部分も多い。ひとまずは続報が待たれるところだ。

文●中村光佑

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