海外テニス

「負けることもテニスの一部だ」フェデラーの言葉に学ぶテニス、ビジネス、人生のスキル

中山和義

2019.11.07

グランドスラム史上最多の20勝を誇るフェデラーの言葉には、様々なヒントが隠されている。(C)Getty Images

 フェデラーの試合を見ていると、何も考えずに自然と理想の動きができる天才のように見えるかもしれません。しかし、インタビューを聞いてみると、試合の戦略や心構えなどいろいろなことを考えているのが分かります。フェデラーのようにプレーをするのは難しいでしょうが、彼の試合に対する言葉から、勝つためのヒントをもらうことはできます。

 試合になると不安になって緊張をしてしまう人が多いと思います。普段と同じように冷静でいられれば、もっと試合に勝てるのにと思う人もいるはずです。フェデラーはこのことについて

「不安は必要だと思う。試合の前に緊張したり、コート上を歩きながら、自分の手が汗で冷たくなるのを感じたい」

 と言っています。不安になって、緊張するのは必要なことだと考えているのです。

「テニスは最高だ。常に緊張感に溢れている。勝とうが負けようが、僕はずっとこのスポーツと関わっていくと決めたんだ」

 さらに、緊張することがテニスの大きな魅力だとも話していました。確かに、「緊張したらどうしよう……」と悩むよりも、緊張を楽しんだ方が普段の力を発揮できると思います。
 そして、フェデラーは試合が始まった前半、試合を優位に進めるための戦略として、

「いつも同じ所を狙ってはいけない。試合の序盤に、どこでも狙うことができるということを見せておき、あとで大事な局面になった時に、どこでボールが来るか予想がつかない状況にしておくことが重要だ」

 と話しています。この言葉通り、彼の試合を見ると序盤から色々なコースを積極的に狙っているのが分かります。このような戦略で、精神的に優位に立つことの意味を

「プレーを戦略的に組み立て、いつでも複数の選択肢を取れるようにしておくことが重要だ。それが相手にとって最も危険な状態だから」

 とも語ります。フェデラーのショットはコースだけでなく、同じスピンでもバリエーションが豊富で、状況に応じて打ち分けられています。それが強さの秘密になっていると思います。

 さらに、この戦略を支えているのが、フェデラーの試合に対する前向きな気持ちです。