テニス界の初夏を彩る欧州クレーコートシーズン。その赤土の舞台でまばゆい輝きを放っていたのはウクライナの23歳、マルタ・コスチュク(世界ランキング15位)だった。
フランス・ルーアンでの「オープン・キャップファイナンス・ルーアン・メトロポール」を制し、続くスペインのビッグトーナメント「ムチュア・マドリード・オープン」でも頂点へ。破竹の勢いのまま乗り込んだ最高峰の舞台「全仏オープン」でも、彼女の快進撃は止まらなかった。気づけば、積み上げた白星は「17」。 ウクライナ人選手として初のグランドスラム決勝進出という偉業を目前に控え、彼女は間違いなく注目されていた。
だが、勝負の世界はときに残酷だ。準決勝のコートでネットを挟んで向かい合ったのは、過去2戦全勝と相性の良かったミラ・アンドレーワ(ロシア/同8位)。誰もがコスチュクの優位を疑わなかった。だが、いつもなら決まるはずの攻撃的なテニスが影を潜める。 狂い始めた歯車を戻せないまま、第1セットを1-6で落とすと、続く第2セットも要所を締められ3-6。連勝記録は「17」でストップし、彼女のパリでの挑戦はベスト4で潰えた。
決勝の舞台を逃した悔しさが、ないはずがない。しかし、大会を終えた彼女の心を満たしていたのは、涙ではなく、かつてないほどの「充実感」と「感謝」だった。
現地6月5日、コスチュクは自身のインスタグラム(@martakostyuk)に、胸の内を静かに、そして力強く綴った。
「この大会が終わった後、何を話そうかと考えていました。数年前の私なら、初のグランドスラム準決勝に進みながら決勝に行けなかったとき、今とは全く違った気持ちになっていたでしょう。もちろん、がっかりしています。もっと上を目指したかった」
しかし、彼女はこう続ける。
「でも同時に、これまでとは少し違う気持ちを抱いてパリを後にしています。それは、この道のりが今、どのようなものになりつつあるかに対する『感謝の気持ち』です」
かつての彼女にとって、テニスコートは「結果だけ」がすべてを決める過酷な場所だった。勝てば官軍、負ければすべてが否定される――そんなプレッシャーのなかにいた彼女を変えたのは、激動のシーズンを通じて得た精神的な成熟だった。
「私は長い間、すべてを結果だけで測っていました。それが最近になって、結果の背後にある成長や、この道を共に歩んでくれる人々、そして最高レベルで戦える機会そのものに感謝することを学んでいます。今の自分がテニスと築いている関係が、以前とはどれほど違うものになっているかを実感しました」
苦しいときも支え続けてくれたチーム、寝食を共にするスタッフ、そして何より、戦火のなかで自分を応援してくれる故郷・ウクライナの人々。コートに立つのは一人でも、決して孤独ではない。その気づきが、彼女をまた一つ大人にした。
「初めてのグランドスラム準決勝。チームのみんな、この2週間支えてくれたすべての人々、そして故郷ウクライナにいるすべての人々に感謝します」。悔しい敗戦を、未来への糧へと昇華させた23歳。彼女の視線は、もう前を向いている。 メッセージの最後は、こんな言葉で締めくくられていた。
「芝生のコートでまた会いましょう」
赤土のクレーコートから、今度は緑鮮やかな芝生のシーズンへ。休む間もなく、コスチュクの第二幕が幕を開ける。敗北を知り、真の強さを手に入れた彼女の進撃は、ここからが本番だ。
構成●スマッシュ編集部
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フランス・ルーアンでの「オープン・キャップファイナンス・ルーアン・メトロポール」を制し、続くスペインのビッグトーナメント「ムチュア・マドリード・オープン」でも頂点へ。破竹の勢いのまま乗り込んだ最高峰の舞台「全仏オープン」でも、彼女の快進撃は止まらなかった。気づけば、積み上げた白星は「17」。 ウクライナ人選手として初のグランドスラム決勝進出という偉業を目前に控え、彼女は間違いなく注目されていた。
だが、勝負の世界はときに残酷だ。準決勝のコートでネットを挟んで向かい合ったのは、過去2戦全勝と相性の良かったミラ・アンドレーワ(ロシア/同8位)。誰もがコスチュクの優位を疑わなかった。だが、いつもなら決まるはずの攻撃的なテニスが影を潜める。 狂い始めた歯車を戻せないまま、第1セットを1-6で落とすと、続く第2セットも要所を締められ3-6。連勝記録は「17」でストップし、彼女のパリでの挑戦はベスト4で潰えた。
決勝の舞台を逃した悔しさが、ないはずがない。しかし、大会を終えた彼女の心を満たしていたのは、涙ではなく、かつてないほどの「充実感」と「感謝」だった。
現地6月5日、コスチュクは自身のインスタグラム(@martakostyuk)に、胸の内を静かに、そして力強く綴った。
「この大会が終わった後、何を話そうかと考えていました。数年前の私なら、初のグランドスラム準決勝に進みながら決勝に行けなかったとき、今とは全く違った気持ちになっていたでしょう。もちろん、がっかりしています。もっと上を目指したかった」
しかし、彼女はこう続ける。
「でも同時に、これまでとは少し違う気持ちを抱いてパリを後にしています。それは、この道のりが今、どのようなものになりつつあるかに対する『感謝の気持ち』です」
かつての彼女にとって、テニスコートは「結果だけ」がすべてを決める過酷な場所だった。勝てば官軍、負ければすべてが否定される――そんなプレッシャーのなかにいた彼女を変えたのは、激動のシーズンを通じて得た精神的な成熟だった。
「私は長い間、すべてを結果だけで測っていました。それが最近になって、結果の背後にある成長や、この道を共に歩んでくれる人々、そして最高レベルで戦える機会そのものに感謝することを学んでいます。今の自分がテニスと築いている関係が、以前とはどれほど違うものになっているかを実感しました」
苦しいときも支え続けてくれたチーム、寝食を共にするスタッフ、そして何より、戦火のなかで自分を応援してくれる故郷・ウクライナの人々。コートに立つのは一人でも、決して孤独ではない。その気づきが、彼女をまた一つ大人にした。
「初めてのグランドスラム準決勝。チームのみんな、この2週間支えてくれたすべての人々、そして故郷ウクライナにいるすべての人々に感謝します」。悔しい敗戦を、未来への糧へと昇華させた23歳。彼女の視線は、もう前を向いている。 メッセージの最後は、こんな言葉で締めくくられていた。
「芝生のコートでまた会いましょう」
赤土のクレーコートから、今度は緑鮮やかな芝生のシーズンへ。休む間もなく、コスチュクの第二幕が幕を開ける。敗北を知り、真の強さを手に入れた彼女の進撃は、ここからが本番だ。
構成●スマッシュ編集部
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