海外テニス

賛否が交錯するジョコビッチの下位選手救済案。救う側の内山靖崇と、救われる側の高橋悠介、それぞれの思いは?【男子テニス】

内田暁

2020.05.07

世界90位の内山は、下位選手を救済することには賛意を示すが、その方法については彼なりの考えを持つ。写真:山崎賢人(THE DIGEST写真部)

「全く、事前の通達はなかったです。僕も皆さんと同じニュースで知りました。トップ100がお金を出すと書いてあったので、『オレも入ってるじゃん!?』という感じで」

 現在、世界ランキング90位。昨年10月に100の壁を破った内山靖崇は、そのニュースを見て「ビックリしました」と苦笑いした。

 ノバク・ジョコビッチが提唱する、コロナ禍で苦境に立たされたテニス選手救済のための基金設立の話題が流れたのは、10日ほど前のことである。シングルス上位100位、ダブルス上位20位の選手たちから寄付金を募り、それを250位~700位あたりの選手たちに分配しようという大規模なプランだ。

 この提案は称賛を浴びる一方で、一部の選手からは「下位にはプロフェッショナルではない者もいる。そんな選手にも支援が必要なのか?」との声も上がる。それら賛否両論渦巻くなか、トップ100に入って日の浅い内山は、双方の立場を慮った。
 
「下位選手を救済するという着想そのものには、賛成です。ただ最近、西岡(良仁)とも話したのですが、それを選手が払うべきなのか? 僕が250位以下の選手と対戦して負けることもあるわけだし、同じ土俵で戦っている選手同士でお金を授受するのは、どうだろうとは思います。

 ならば選手への援助はATP(男子プロテニス協会)やITF(国際テニス連盟)にやってもらい、僕らが援助するのは、運営が厳しくなっているATPチャレンジャーや、ITFの大会が良いのではと思いました」
 
 内山が、250位以下の選手にも抱くライバル心とは敬意であり、同時に、かつて自分がその地位にいた時でも、上位選手と伍して戦う力はあったというプライドにも依拠しているだろう。

 一方で、もし今の状況下で自分のランキングが400位より低かったら、自信やモチベーションを保つのは難しいかもと仮想する。

「なぜ400位かというと、そこがチャレンジャーに出られるギリギリのランキングだから。フューチャーズ(チャレンジャーより下位のITF主催大会)を回るのって、一番お金が掛かるんです。ホスピタリティもないし賞金も少ない。ポイントも少ないので、何回も勝たないと次のレベルに上がれない。チャレンジャーだと、優勝すればランキングもジャンプアップするのでモチベーションも上がるんですが、フューチャーズとなると、僕なら次の人生も考え始めるかもなって……」