海外テニス

大坂なおみが広告・契約収入で世界8位。女性アスリート収入上位をテニス選手が独占する市場価値の高さ

内田暁

2020.06.01

女性アスリート史上最高額の収入を叩き出した大坂。(C)Getty Images

 大坂なおみが、女性アスリート史上最高額となる3,740万USドル(約40億4000万円)を、1年間で稼ぎ出した――。

 1週間ほど前に流れたこのニュースは、大坂の地位や評価を改めて世界に印象づけると共に、数字でも明確に示している。

 収入が、アスリートの価値を全て規定する訳では、もちろんない。だが世間的な知名度や影響力、そして市場価値を測る上での、大きな指標であることは間違いない。

 この"アスリート収入番付"は、アメリカの経済誌『Forbes』が毎年発表しているもので、収入の対象期間は6月1日からの12ヵ月間。大坂は昨年の女性アスリート収入ランキングでも、2,430 万ドルで、セレナ・ウィリアムズに次いで2位。その内訳は、賞金が830万ドルで、広告・スポンサー料が1,600万ドルだった。今年は、賞金は340万ドルと昨年より半減だが、それ以外の収入が3,400万ドルと大幅上昇。
 
 なお大坂は、先週末に発表された男女総合の2020年収入番付でも、全体の29位につけている。S・ウィリアムズは33位で、女性アスリートでトップ100入りしたのはこの2人のみ。さらに今季の収入ランキングを広告・契約料のみに限ってみると、大坂は全体の8位、S・ウィリアムズは9位だというから驚きだ。ちなみに1位は、広告収入だけで1億ドル(約107億円)の大台を叩き出し、総合収入ランキングでもトップに座したロジャー・フェデラーだ。

 社会や職場における男女平等が叫ばれ久しいが、スポーツは男性の方が遥かに稼ぐ世界である。例えば2018年のアメリカでは、同業種間の男女収入比が5:4だったが、サッカー界では女子の方が興行収益で男子を上回っていたにも関わらず、女子選手の収入は男子の4分の1以下だったという。この事態を受けてアメリカでは、女子サッカー選手たちが改善を求める声を上げた。

 その観点で見れば、テニスは時代の先駆者だ。時の女子テニス界の女王であるビリー・ジーン・キングが、WTA(女子テニス協会)を立ち上げたのが1973年。USオープンがグランドスラム初の男女同額賞金を施行したのも、同年のことである。

 1960年代後半のテニス界は男女の賞金格差が激しく、テニスがプロに門戸を開いた1968年のウインブルドンでは、男子優勝者の賞金は女子のそれの約2.7倍。1970年の時点で、グランドスラム以外のトーナメントでの男女の賞金差は、12:1にまで広がっていたという。
 
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大坂が新たな時代のオピニオンリーダーとなるか…