国内テニス

子どものころ刺激を受けた添田豪のテニス。数年後、直接打ち合う機会が~松尾友貴【プロが憧れたプロ|第3回】

渡辺隆康(スマッシュ編集部)

2020.07.25

松尾友貴(右)によれば、添田豪(左)のフォアのフォームは昔も今も変わっていないという。写真:山崎賢人、金子拓弥(THE DIGEST写真部)

 現在、プロとして活躍している選手も、現役を引退してコーチをしている人も、小さい頃には憧れのプロがいたはずだ。【プロが憧れたプロ】シリーズの第3回は、先ごろ引退した松尾友貴プロに話を聞いた。

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 松尾友貴はジュニア時代、ひときわ輝いていた選手だ。2001年全国選抜ジュニアU-12では、錦織圭と決勝で対戦。敗れはしたが、小学6年生が主体の12歳以下で、1つ下の松尾が決勝に進んだこと自体、称賛に値することだった。

 全国選抜ジュニアU-14優勝、全国中学準優勝と、その後もトップジュニアの道を歩んだ松尾。そんな彼が少年時代に憧れた選手は、添田豪だった。小学5年生の時、全日本ジュニア12歳以下に出場した松尾は、18歳以下でトップに君臨していた添田を初めて目にした。「名前は知っていたけど、生で見てインパクトがありました」と松尾は当時を思い起こす。

「テニスがかっこいいし、きれいだし、球の精度もすごかった。ああいう存在になりたいなと思いました」

 18歳以下と12歳以下では大人と子どもと言っていい。添田のフォアハンドは松尾の目にまぶしく映った。「打った後に腕が前にきて終わるのが、シンプルできれいなフォームでした」。当時フォアを両手で打っていた松尾は、「それを見て片手打ちにしたいなと思った」そうで、片手に転向するきっかけとなった。
 
 やがて添田はプロとして大成し、デビスカップ日本代表、グランドスラム出場など、世界を舞台に活躍する選手となる。松尾もジュニアを卒業後、プロになったが、世界の壁は厚く、添田との距離はどんどん離れていった。直接対戦したことはないのか尋ねると、「ないです。ぜんぜん遠かったですから」と少し寂しげに答える。

 それでも16歳くらいの頃、一度だけ接点があった。トップジュニアとしてデ杯合宿に呼ばれた松尾は、代表メンバーである添田と練習させてもらった。
「ミスしないし、コンスタントで、ボールが違うなぁと。うれしかったですね」

「ジュニアの時にトップとやれるというのは、心を動かされるんです」と松尾。一方で「でも、ずっと添田さんに憧れていたわけではなく、次々いろんな選手に憧れた」とも言うのは、照れ隠しにも思えるし、同じプロとしての矜持なのかもしれない。

 そんな松尾も29歳となり、この2月に現役を引退した。35歳の添田は、今も第一線でプレーしている。一度、2人が戦う姿を見てみたかった気もするが、もうその機会はやってこない。

取材・文●渡辺隆康(スマッシュ編集部)

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