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海外テニス

「過去最高のフィジカル」を体現する大坂なおみ。3度目のグランドスラム戴冠に向けてカギを握るのは…

内田暁

2020.09.08

ツアー中断前より着実に成長している大坂。この後の活躍にも期待だ。(C)GettyImages

ツアー中断前より着実に成長している大坂。この後の活躍にも期待だ。(C)GettyImages

 大きなストライドでベースライン上を駆け、ボールの落下点に入るや素早く体勢を整えると、鋭くラケットを振り抜きボールを叩く。

「今日の試合は、たとえミスになってもラケットをしっかり振って、打ち合いを支配しようと思っていた」

 試合前の決意通り、全米オープン4回戦でアネット・コンタベイトと戦う大坂なおみは、迷いなくボールを打ち抜きラリー戦を支配した。それは、前哨戦のウェスタン&サザンオープンでの接戦から持ち帰った、反省点でもあったという。
 
 ストロークで真っ向打ち合い、相手を組み伏せるかのようにポイントを重ねたプレーに軸を通すのは、一層強化されたフィジカルだろう。それは単に、筋力や心肺機能の向上をさすのではない。それら強化された機能をテニスの動きへと連動させ、勝利というゴールに直結させている点にある。

 6月末に、新たにフィットネスコーチの中村豊を招いた“チームなおみ”が目指したのも、その地点だ。

 走り、目いっぱい身体を伸ばした可動域限界値に近い状態から、なおかつ体勢を整え力のあるストロークを打つ。そのためのトレーニングを、このツアー中断中に大坂は重点的に行なってきたという。もちろんその背景には、コーチのウィム・フィセッテと中村らの、綿密なコミュニケーションがあった。

「ケガの痛みを少々感じてはいるものの、なおみの身体の状態は非常に良いですよ」
 知的かつ冷静な物腰から“プロフェッサー”の愛称で呼ばれるフィセッテは、大坂のフィジカルの向上に太鼓判を押す。
 ツアーの長期中断が決まった時、フィセッテが大坂に言ったのは、「ツアーが再開した時、過去最高のフィジカルになっていよう」ということだった。
 
 そこでフィットネスコーチを探した時、白羽の矢が立ったのが中村である。
「第1に彼は豊富な知識の持ち主であり、第2に、シャラポワや数々のトップ選手と取り組んできた経験がある。さらに彼自身がテニスをやっていたので、この競技を深く理解しているし、上達のために何が必要か良く知っている」
 新トレーナーの特性をそう述べた上で、フィセッテは「フィットネスコーチと密にコミュニケーションを取り、同じ方向に向かっている」と言葉に確信の色をにじませた。

 会場に観客の姿はなく、選手たちの行動範囲を規制する“バブル”内で行なわれている今年のUSオープンは、いかに経験豊な選手やコーチたちにとっても、何もかもが初めての経験だ。
 その未知の大会を勝ち抜くうえで、ここから先最も重要になるのは、精神面だとフィセッテは見る。

「外界と切り離された状態で、既に選手は3~4週間を過ごしている。この最後の一週間で試されるのは、メンタルのタフさ。小さなホテルの部屋と会場を行き来するだけの生活は精神的に厳しいだけに、そこが勝敗を分ける要素になるだろう」

 向上したフィジカルと、コート外の喧騒も受け止める内面の強さを示して至ったベスト8。
 その先にある3度目のグランドスラム戴冠に向け、環境への適応力や勝利への渇望が試される、未知なる戦いが始まる。
 
文・構成●内田暁

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