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国内テニス

土居美咲、東レPPO8強入り! 相手の心理を読み切った完勝劇は、あの「ぐちゃぐちゃ」があったから……

内田暁

2019.09.20

一時は出口の見えないトンネルを彷徨っていた土居だが、「今は全てがうまく噛み合っている」と冷静な試合運びで勝利を手にした。写真:Getty Images

一時は出口の見えないトンネルを彷徨っていた土居だが、「今は全てがうまく噛み合っている」と冷静な試合運びで勝利を手にした。写真:Getty Images

【東レ・パン・パシフィック・オープン】
シングルス2回戦/9月19日(木)
土居美咲[W]  7-6(5) 6-3 D・ベキッチ[7] 

 劣勢の中でも逆転への糸口を探し、ひとたびその端をつかんだなら、一気に引き寄せ綻びとする――。自信のある時、あるいは心技体が噛み合っている時とは、そのように試合の趨勢を見極め、ビジョンを実現できるものなのだろう。今の土居はおそらくは、そのような潮流をつかまえている。

 試合の序盤は、好調の相手のサービスを「予測ができない」状態で、ブレークできる気配は希薄。逆に自分のゲームキープは苦しみ、第5ゲームをブレークされた。流れとしては、完全にベキッチ優勢に。

 それでも土居は、「タイトな場面になると、少しずつミスが出たり、焦ったりしている」という相手の心理を、冷静に見ることができていた。シングルス準優勝、ダブルスでは優勝した先週の広島大会からここまで、多くの試合と勝利を重ねてきたその経験が、試合中にも「頭をクリアにする」だけの状況判断力を、彼女に与えていたという。
 その広い視野こそが、第1セットの終盤では、よりクリアになりはじめた。ゲームカウント5-4の相手サーブで40-15とリードされるも、土居は攻撃的なリターンを打ち込み、ラリー戦で徐々に優位に立ち始めた。このゲームをブレークして追いつくと、タイブレークでは5-2までリードを広げる。そこから相手の追い上げを許したが、5-5の局面で長い打ち合いをしぶとく制し、第1セットを逆転で奪い取った。
 
 第2セットも最初のゲームをブレークされるも、「相手も、そんなに自信があった上での2-0ではない。まだ焦らなくていい」と、ここでも相手を見る冷静さがあった。

 果たしてその読みどおり、直後のゲームを相手のダブルフォールトに乗じてブレークバック。そうして奪い返した流れを、土居は最後まで相手に引き渡すことはなかった。第1セットでは効果的に沈められたドロップショットも、出足鋭く返していく。過去の対戦経験から、「体勢が崩れると、ボールを高く上げてくる」という相手の特性も頭に入れて、浮いたボールは迷わずスイングボレーで叩いた。4ゲーム連取で一気に勝利へと近づくと、最後もブレークしてゴールへ駆け込む。

 相手の心の揺らぎを察する嗅覚、チャンスを待つ忍耐力、そして流れを一気に掌握する瞬発力。それらを統括しての、完勝とも言える勝利だった。
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