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【錦織圭・全仏テニス名勝負集2】看板落下のアクシデントで急展開。絶不調から立ち直りツォンガに肉薄/2015年準々決勝

スマッシュ編集部

2020.09.27

2セットダウンから追いついた錦織だが、最後にギアを上げたツォンガに振り切られた。写真:THE DIGEST写真部

 全仏オープンテニス開催に合わせて、月刊スマッシュの過去のリポートの中から、錦織圭の「全仏名勝負」をピックアップしてお送りするシリーズ。第2回は2015年の準々決勝、崖っぷちから反撃に転じたジョー-ウィルフリード・ツォンガ(フランス)とのフルセットの激闘だ。

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「中断するまでは完全に自分を見失っていた感じ。あれだけ見失ってしまうのも久しぶりですね」

 それは確かに意外な光景だった。錦織は初めて進んだ全仏オープンの準々決勝で、ツォンガに1-6、4-6、6-4、6-3、3-6で敗退。「中断」とは、第2セット第7ゲーム終了後、2-5のエンドチェンジでコート・フィリップ・シャトリエのバックスタンド上部の金属板が強風に煽られ、スタンドへ落下したアクシデントによるものだ。

 そこまでの錦織は、1stサービスが入らず攻め込まれてはミス、逆にヘビートップスピンで様子を見るツォンガを攻めてはミスを重ね、瞬く間にゲームを献上していた。
 
 本人も言うように、当日強く吹いていた風や、定石通りにツォンガのバックハンドを狙わなかった作戦ミス、あるいはアグレッシブな攻撃が身上のツォンガがスローペースで入ってきた駆け引きのあやなど、苦戦の原因はいくつか挙げられる。

 しかし、これまで数々の修羅場をくぐり抜けてきた錦織が、試合の中で全く修正できなくなるほど我を失うとは……。もし中断がなければ、あっさり3セットでケリがついただろう一方的な試合展開だった。

 ただ実際には、試合が中断した約40分間にコーチと話し、やるべきことを整理した錦織は、再開後から見違えるようなプレーを見せる。いきなりウイナー2本を突き刺してブレークすると、続けて安定感あるサービスゲームも初披露。このセットでの逆転はならなかったが、第3、第4セットを奪って試合を振り出しに戻した。

 こうなると逆転勝利への期待は俄然高まる。ファイナルセットでの勝負強さは、錦織が何度も見せつけてきたものだ。