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海外テニス

“限られた領域”を目指す故の苦戦。日比野菜緒、リズムに乗れなかった意外な理由【全豪オープン/現地発リポート】〈SMASH〉

内田暁

2021.02.10

全豪オープン1回戦、1時間57分の激闘の末、紙一重の勝利をつかんだ日比野菜緒。(C)Getty Images

全豪オープン1回戦、1時間57分の激闘の末、紙一重の勝利をつかんだ日比野菜緒。(C)Getty Images

 終盤の3連続マッチポイント、そしてその後のもつれた展開が、この試合を象徴するようだった。

 アストラ・シャルマは、主催者推薦枠で出場した、世界129位の地元選手。ランキングでは日比野が上ではあるが、勝利のみを遮二無二求める相手に迷いはない。

 対して、昨年10月の全仏オープンテニス以降ツアーから離れていた日比野は、「どういう気持ちで挑もうか」と種々に思いを巡らせながら、コートに向かっていた。

 気持ちの整理がつかぬままコートに立ち、そうして、最初のリターンゲームを簡単に落とした時、彼女は「試合勘が少しない。あまり調子も良くない」と感じたという。右肩を痛めたため、前哨戦も棄権せざるを得なかったことも、サービスや打球感に影響を及ぼしたようだ。

 そのような自身の状態を知り、落胆や焦りもあったはず。だが日比野は現状を受け入れて、「走って走って、ラリーして自分のリズムに持っていこう」と理想を捨て、ある意味「開き直った」という。
 
 第1セットは、シャルマの時速180kmを超える高速サービスと、高く跳ねるセカンドサービスにも手を焼きブレークのチャンスがつかめず失う。

 それでも第2セットでは、走り回って1本でも多くボールを返し、高い軌道のボールを使いながら流れを引き寄せる。ブレーク合戦を制して第2セットをもぎ取ると、第3セットもゲームカウント5-5でブレーク。勝利へのサービスゲームでは、相手のミスもあり40-0の3連続マッチポイントにこぎつけた。

 ただこの局面で、それまで思い切り良くプレーしてきた相手が、ボールをコートに入れるようになってくる。その相手の緊張がネットを越えて日比野にも伝わり、すると日比野のショットも浅くなりだした。

 シャルマが1ポイントを決めるたび、客席から大歓声が湧き起こる。一瞬で反転した流れに飛び乗り、4ポイント連取する挑戦者。さらには、彼女がバックの強打をベースライン際に叩き込むと同時に、観客は歓喜の声を上げる。この段に来て再び、試合は振り出しに戻ったかに思われた。
 

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