海外テニス

「東京に行くか、行かないか…」世界のプロテニス選手が考える“オリンピック出場の価値”とは…<SMASH>

内田暁

2021.07.04

ジョコビッチは自身のキャリアで唯一足りない金メダルを求めて参戦するが、男女含めて東京五輪行きを見送る選手は少なくない。(C)Getty Images

 行くべきか、行かざるべきか——。

 オリンピック出場に関し、そのような悩みがあること自体が、他競技の選手にしてみれば意外かもしれない。

 ただ、自分で出場大会を決めて世界中を転戦し、賞金とランキングポイントを稼ぎながら生計を立てるプロテニス選手にしてみれば、オリンピックは4年に一度現れる"非日常"的な大会だ。

 いかに勝とうが、賞金もランキングポイントも得られない。国を代表することに、どの程度の意義や栄誉を見い出すかは、選手個々の価値観や状況次第だ。

 その点に関しては、錦織圭も葛藤を隠さない。

「ランキングを上げるためには、オリンピックはなかなか優先できない。ランキングポイントも無いなら、その労力をグランドスラム(四大大会)に注ぎたいというのはあります」

 そう素直に打ち明けるが、一方で過去の出場経験から、オリンピックがいかに特別な場かも理解している。それが母国開催となれば、なおのことだ。

「オリンピックはオリンピックで、すごい意味があるものだし、ちょっと特別なものとして考えてはいます」

 その「特別なもの」を一層特別な瞬間にすべく、錦織はシングルスのみならず、マクラクラン勉と組んでダブルスにも出場する。
 
 オリンピックに特別な意義を見いだすトップ選手と言えば、ロンドン、そしてリオの2大会連続金メダリストの、アンディ・マリーは外せない。人工股関節を要する大怪我から復帰した不屈の男は、今夏も東京大会に出場予定。それもシングルスのみならず、ダブルスにも出るというのだから、恐らくは最後になるオリンピックへの情熱が伺える。

 そして行く以上は、出ることのみに意義があるとは考えない。

「オリンピックではメダルを狙う。理想は金メダル」と、あくまで表彰台の頂点を狙いにいく。

 そのマリー以上に、金メダル獲得に執念を燃やすのが、ノバク・ジョコビッチだ。19のグランドスラムを抱く世界1位が、オリンピックのメダルに縁がないのは、テニス界の最大のパラドックス。今年は全豪オープン、さらに全仏オープンも制して"ゴールデンスラム"(四大大会+五輪優勝)への希望をつなぐ彼が、東京で狙うのは、金メダルただ一つだ。

 一方で、東京大会を辞退するトップ選手が、例年以上に多いのも事実。
NEXT
PAGE
コロナ禍でも五輪に参加する価値はあるのか?