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海外テニス

大坂なおみ、“完璧主義者”から脱却へ。「完璧なプレーではないが、2セットで勝てたのは素晴らしい」<SMASH>

内田暁

2021.09.01

ボウズコワ(左)に勝利した大坂なおみ(右)。心の内に様々な葛藤を抱えながらも、連覇に向けて好スタートを切った。(C)Getty Images

ボウズコワ(左)に勝利した大坂なおみ(右)。心の内に様々な葛藤を抱えながらも、連覇に向けて好スタートを切った。(C)Getty Images

「朝起きて、ぐずぐずせずに何かをやり遂げたら? チャンピン。しばらく悩まされていた仕事上の問題を解決することができたら? 掛け値なしのレジェンド。自分の人生は自分だけのものであり、他人の基準で価値を測る必要なんてない」

 全米オープンテニス開幕を翌日に控えた朝、大坂なおみは自身のソーシャルメディアに、そんな印象的な言葉を記した。

 そのような“長文メモの公開”は、ここ数年……特に全米オープンを控えたこの時期の、恒例行事とも言える「告白」だ。

 3年前、大好きな北米のハードコートで思うような結果が残せなかった時も、やはり彼女は苦しい胸の内をさらけ出し、父親との長くポジティブな会話が、暗闇を抜ける光となった。

 そのわずか数週間後、彼女は全米オープンで頂点へと駆け上がる。自分の考えを整理できた影響は、心のあり方を変えたと当時の彼女は明かしている。

 はたしてこのような行為が、「自分のためなのか、人々に何かを訴えかけるためなのか、自分でもまだわからない」と彼女は言う。ただ、「自分の考えを外に出すことで、世の中の意見やエネルギーをもらえる気がする」のが、今も継続している理由だ。
 
 今回の全米オープンの会見で、彼女は、興味深い自己分析を行なっている。大坂はこれまで、自身を再三「完璧主義者」と定義してきた。あるいは記者ら周囲の人に、「とても謙虚」と評されてきたとも自覚している。

 だが、一件ポジティブに見える「完璧主義者」のラベルには、心の傷が隠されていた。

「これまでの私は素晴らしい業績を残しても、それが完璧でないと、自分に失望してきた。でもそれは、とても精神的に良くないことだと気付いたし、本当に変えたいと思っている」

 自身の内面の奥底にある本質との対峙と、その変革――それこそが、今大会で彼女が追い求める、パーソナルながら普遍的な壮大なテーマだ。

 その旅の船出となる初戦は、ファンが生み出す熱狂と興奮のなか、まずは進むべき方向性を手さぐりするかのような内容だった。
 
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