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海外テニス

錦織圭と、その背中を追うマクドナルド――共にケガを乗り越えて迎える3度目の邂逅で見えてくるものは?<SMASH>

内田暁

2021.09.02

全米オープン初戦を突破し、肩の調子も問題ないという錦織。大会4日目の2回戦ではマクドナルドと3度目の対戦を迎える。(C)Getty Images

全米オープン初戦を突破し、肩の調子も問題ないという錦織。大会4日目の2回戦ではマクドナルドと3度目の対戦を迎える。(C)Getty Images

 それまで対戦のなかった2人の選手の足跡が、突如として惹かれ合うように交錯し、互いに強く影響を及ぼすことがある。全米オープンテニス2回戦で対戦するマッケンジー・マクドナルドは、今、錦織圭にとってそのような存在になりつつある選手だ。

 公式記録などを見ると、両者の対戦は、3週間前のシティ・オープンのみとなっていることが多いだろう。だが実際の初対戦は、2018年2月。テキサス州ダラス市で行なわれた、ツアー下部大会に相当する“ATPチャレンジャー”の決勝戦だ。

 手首のケガから復帰した直後の当時の錦織は、何にも増して勝利と自信を欲していた時期。一方、大学からプロに転向して2年目のマクドナルドは、トップ100を視野に捉え、躍進の季節を疾走していた。

 期待の若手として注目を集めつつあるマクドナルドが、そのプレースタイルから立ち姿まで錦織を彷彿させることは、アメリカ国内でも話題になっていた。身長178センチのアジア系。武器は軽快なフットワークと、広角に打ち分けるストローク。そして、子どもの頃から好きだった選手は、「アンドレ・アガシと、ケイ・ニシコリ」。

 その憧れの存在が、期せずしてチャレンジャー大会に出場し、しかも決勝で対戦することになったのである。
 
「ケイをアイドル視してしまい、地に足がついていなかった」

 初対戦での完敗を、後にマクドナルドは、そう回想する。試合後の表彰式では、敗者は「対戦できて光栄」と顔を輝かせ、そして勝者は「優勝はうれしいけれど、この大会には、戻ってこないようにしないとね」と困ったような笑みをこぼした。

 それから3年半経った今夏、2人は2度目の対戦を迎える。戦いのステージは、ATP500であるシティ・オープンの準決勝。初対戦時より遥かにグレードアップしたが、それは単に、年月が2人を成長させたというような、一本道な物語ではない。

 2018年の錦織は、ダラスでの優勝がブースターになったかのように勝利を重ね、世界の9位でシーズンを終える。だがその翌年、今度は右ヒジに痛みを抱え、10月にはメスを入れる決断まで下した。

 復帰時期は想定よりやや遅れ、そのままコロナ禍によるツアー中断期に突入。2020年8月の復帰後も、戻り切らぬ打球勘や肩の痛みにも苦しめられたが、ようやく「この2年で、いちばん良い」と明言するまでに手ごたえを覚え到達したのが、シティ・オープンの準決勝だった。

 対するマクドナルドも、あの初対戦から紆余曲折の歳月を経て、今に至っている。2019年4月にはランキング57位を記録するも、その直後の全仏オープンで足を負傷。年内にコートに戻ることはなく、ランキングを200位台まで落とした中で、ツアーはコロナによる停止の時を迎えた。

 ツアー再開後に待っていたのは、チャレンジャー予選からの再スタートという過酷な現実。それでも1年をかけてランキングを上げ、今一度トップ100への帰還を目指すなかで迎えたのが、錦織との2度目の対戦だ。
 
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