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【伊達公子】選手の成長に合わせてコーチは変えざるをえない。新コーチは遠征先で情報をキャッチして見つける<SMASH>

伊達公子

2021.10.29

コーチとの契約を惰性で続けるのはよくないという伊達公子さん。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)

 テニスシーズンの終わりが近づいてきました。全米オープンに優勝したエマ・ラドゥカヌ(イギリス)の、新しいコーチ探しが話題になっていますが、この時期は来シーズンに向けてコーチを探す選手もいます。

 まず、コーチは変えるべきかどうかという点ですが、ずっと1人の選手を見られるコーチがいれば、変えなくていいと思います。ですが、それは現実的には難しいでしょう。幼少期、育成期、プロになりたての時、熟成期で、それぞれコーチに求められるものは変化します。それら全てを網羅できる人はなかなかいないため、成長に合わせて変えるべきだと私は思います。

 とくに育成期からプロになる時は、コーチと選手の関係性も大きく変わります。選手が求めていることと、選手はこうあるべきというコーチの考え方にギャップが少ない方がいいわけですが、ギャップが大きくなりやすいのがこの時期です。育成期は技術的なことを重点的に指導していきますが、プロになるとメンタル的なサポートが重要になってきます。

 選手はどのように人材を見つけているのかと言えば、1つは遠征先での情報です。コーチは専属で付いている選手がいない場合、自分を売り込みます。「コーチを探している人がいたら教えて」とアピールしておけば、その情報はパーッと広がります(笑)。
 
 会場で他の選手と練習をしたら、相手選手のコーチも一緒にいるわけなので、そのタイプや傾向はなんとなくわかります。あとはタイミングですね。見てほしいコーチがいても、他の選手に付いていたら無理ですから。でもこれも、「よくケンカしているから終わるかも」など、その気になれば、そういう情報は耳に入ってきます。

 契約する前にはトライアルを行ないます。マンツーマンでやってみて、フィーリングが合うかの確認です。遠征に行くとコーチとは一緒にいる時間が長いので、相性が合わないと続きません。

 日本人選手の場合は、ご飯もだいたいコーチと一緒に食べます。外国人選手は結構メリハリがあり、選手同士で食事に行くこともあります。言葉の問題もあると思いますが、日本人選手はずっと一緒にいることが多いので、一緒にいて疲れない人でないと長く続けるのは簡単ではありません。
 
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コーチとの契約を惰性で続けるのはよくない