国内テニス

女子テニスの本藤咲良が22歳で現役引退!キャリア最後の全日本初戦敗退も「まったく未練はありません」と晴れ晴れ<SMASH>

内田暁

2021.11.01

ラストマッチと決めていた全日本選手権の初戦で敗れ、22歳の本藤が5年にわたるプロ生活に終止符を打った。写真提供:齋藤宣孝(関西テニス協会)

「負けちゃった!」

 ぎこちなく浮かべた笑みは、コーチの腕に抱かれると、みるみる崩れ両眼から涙がこぼれた。

 本藤咲良、22歳。プロ5年目を迎える彼女にとって、この全日本選手権の1回戦が、キャリア最後の試合となった。

 現在のWTAランキングは662位で、最高位は昨年3月の542位。

 22歳の決断はあまりに早すぎるように思えるが、「引退のタイミングはコーチが決めてください」と、プロ転向の時から引き際はコーチの松田将十に一任していたという。

 松田がその時を最初に本藤に示唆したのは、プロ転向から2年経った時。

「この先2年以内に、250位を切るのが目標。それができなかったら辞めていいよ」

 250位という数字は、グランドスラムの予選圏内。プロ転向から4年を区切りに定めたのは、大学に進学していたら、そこが卒業のタイミングだから。この目標設定の背景には、高校卒業時の本藤が、プロ転向を渋っていたことにあった。

 名門、高崎テニスクラブに通っていた本藤だが、「高校の頃は、自分がプロで通用するとは思えなかった」と吐露する。

 奇妙な物言いになるが、コーチの松田も、本人の自己評価に太鼓判を押す。

「体力測定やインターバル走をやっても、ジュニアに負ける。運動能力は、低い方」
 
 それがコーチの本藤評だ。
 
 ただコーチの目に止まったのは、コート上での読みの良さ。そして練習前のストレッチや、試合後のケアなどは誰よりもする姿だった。

 高校時の成績は、全日本ジュニアもインターハイも初戦敗退。ただそこから、「プロとしてどこまでいけるのか、試してみたい」という指導者魂を掻き立てる何かが、彼女にはあった。

「大学を卒業し、会社務めするタイプでもない。テニスを続けていれば、ここ(高崎テニスクラブ)でコーチもできる」

 本藤の性格や資質を見極めた上でも、松田はプロ転向を勧めた。曰く「雑草魂の挑戦」のスタートである。

 かくして歩んだプロへの道は、本人が選んだというよりも、周囲によって敷かれたレールだった。ただ当然ながら、本人に確固たる意志が無ければ、留まり続けられる世界でもない。本藤にとって最大のモチベーションは、「(清水)綾乃に勝ちたい」の思いだった。 
 
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22歳の決断を惜しむ声も聞かれたが…