専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
海外テニス

「完全に病気よ」「ネット賭け屋は潰さないとダメ」洪水のようなヘイトメッセージに怒りの告発!テニスプロを苦しめるSNSの闇

レネ・シュタウファー

2019.11.14

多くの女子選手が直面している耐えがたい問題に対して、バチンスキーが声を上げた。(C)GettyImages

多くの女子選手が直面している耐えがたい問題に対して、バチンスキーが声を上げた。(C)GettyImages

 男女問わずプロ選手共通の悩みが顕在化している。社会的迷惑と言ったらよいのか、それとも敢えて「文明の進歩ゆえの煩わしさ」と記したらよいのか、いずれにしても選手側からすれば我慢の限界を超えるまでに苛立ちが募っているのだ。

 全豪オープンの取材でメルボルンに滞在していた私は、ティメア・バチンスキーから、『ネット空間での理不尽な攻撃』についての愚痴を聞かされた。

「ファンがSNSを使って私のことを酷く侮辱しているのよ」と語り始めるや彼女は、息つく暇もなく「話したいことが山ほどあるんだから」と続けた。こうなると私も耳を貸すしかない。

「状況は最悪。ホントにもうメチャクチャよ。選手にだけじゃなく、スタッフにも、そして家族にも攻撃してくるの」

 例えば? 『お前がガンで死ぬのを祈っている』、『このメス犬めが』、『喉を掻っ切ってやるぞ』、『マイアミに2度と来るな。来たら探し出して殺すからな』、『キサマの母親、甥っ子、姪っ子がどこに住んでるのか知ってるぞ』、『お前はとことん汚い女だ』…。

 これらの暴言はオンラインゲームで投資した金を失い、フラストレーションを溜め込んだ連中の仕業である。不満の捌け口を見つけられない彼らは、サイバー空間を利用して誹謗中傷を続け鬱憤を晴らそうとする。
 
 2016年の武漢オープンでバチンスキーは格下のルイーズ・チリコ相手に棄権の末、敗退したのだが、その際「ヘイトメッセージが洪水みたいに大量に襲ってきた。どれもが私を侮蔑する内容だったわ」。

 発信者は『バチンスキー勝利』で金を投資していた。その賭けが外れたことで金を失ったのである。だが、もしも結果が反対だったら状況は違っていたのか? 

「いいえ、同じことよ。私が勝っても負けても、結局は侮辱してくるんだから。もう、どうかしているわ。ネット賭け屋なんて絶対に潰さないとダメよ」

 残念ながら、サイバー空間におけるこうした攻撃から彼女の身を守る方法はない。「亀のように甲羅の中に身を隠すしかないのかな……」と案じるバチンスキーだが、彼女のSNSを管理する恋人のアンドレアスは、「僕にも半端ないほど酷いメッセージが届いてますよ」と同様の被害を打ち明ける。

 顔の見えないギャンブラーに選手が脅され侮辱されるのは、今や日常のありふれた光景になっている。しかしバチンスキーやマディソン・キーズ、ニコール・ギブスのように、世間に公表して抗議する選手はまだ多くない。
NEXT
PAGE

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号