海外テニス

元王者ベッカーが王者候補18歳アルカラスの過密日程を不安視「疲れている状態でプレーするとケガをする」<SMASH>

中村光佑

2022.04.15

自身も若くしてトップへと上り詰めたベッカーだけにアルカラスの置かれている立場がよくわかるのだろう。(C)Getty Images

 ここ最近の凄まじい成長からすでに「次期王者候補」としても呼び声が高い18歳のカルロス・アルカラス(スペイン/世界ランキング11位)。だが元世界1位で往年の名テニスプレーヤーとして知られるボリス・ベッカー氏は、そんな男子テニス界の超新星のオーバーワークを懸念している。

 昨年9月の全米オープンで自身初の四大大会ベスト8入りを果たしたアルカラスは、同年11月の「ネクストジェンATPファイナルズ」を制覇すると、今年2月の「リオ・オープン」ではATP500カテゴリーでの史上最年少優勝を達成。  

 そして3月初旬の「BNPパリバ・オープン」では初めてマスターズベスト4をマークし、その翌週のマイアミ・オープンでは苦しい試合を勝ち抜いて決勝へと進出。決勝ではキャスパー・ルード(ノルウェー/7位)をストレートで撃破し、マスターズ初制覇を果たすと共に大会史上最年少での優勝を飾った。これにより4月4日に更新された世界ランキングでは11位に浮上し、トップ10入りも目前に迫っている。

 18歳とは思えないメンタルの落ち着きぶりと躍動感あふれるプレーで大躍進を遂げているアルカラスは、多くのレジェンドからも「グランドスラムで優勝するチャンスもある」と評価されているほどだ。ところがこのほど欧米スポーツメディア『EUROSPORT』のインタビューに応じたベッカー氏は、アルカラスが大いに期待を寄せられていることを認識しつつも「彼は周りが高く評価していることを信じ込むべきではない」と冷静な見方を示した。
 
 さらに「彼はまだベストではない。まだ成長を続けているところなんだ」と語ったベッカー氏はアルカラスが勢いに乗っているにもかかわらず、「彼にはモンテカルロ、バルセロナ、マドリード、そしてローマでもプレーしないでほしい」とクレーシーズンでの大会出場を見送るように提言したのだ。そう考える理由を次のように説明した。

「彼は人間だから休まなければならないし、時には疲れることもある。疲れている状態でプレーを続けると、最初にケガをする。クレーコートのシーズンは疲れるし、試合も長くなる。トーナメントや試合では、何をすることが良くて何がやりすぎなのか、その境界線を見つけることがとても重要なんだ」

 結局アルカラスはマイアミ優勝の喜びも冷めやらぬ中、現在開催中の「モンテカルロ・マスターズ」(4月10日~17日/モナコ・モンテカルロ/クレーコート/ATP1000)で第8シードとして出場したが、初戦となった2回戦で21歳のセバスチャン・コルダ(アメリカ/42位)にフルセットで敗退。クレーシーズン初戦を白星で飾ることはできなかった。

 だが確かにベッカー氏の言う通り、アルカラスはこの数カ月間で非常に多くの試合数をこなしているだけに疲労やケガは心配されるところ。今回のモンテカルロでの初戦敗退は小休止と捉えるのも良いのかもしれない。次戦に向けてゆっくりと調整を進めてほしいものだ。

文●中村光佑

【連続写真】将来の王者候補アルカラスの動かされても力強く返球したフォアハンド
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