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海外テニス

覚醒シフィオンテクが圧倒的な優勝候補。大坂なおみの現在地、そして注目の対抗馬は?【全仏OP展望】

内田暁

2022.05.22

左から大坂、シフィオンテク、ジャブール。はたして今年の全仏は誰が女王に輝くのだろうか――。(C)Getty Images

左から大坂、シフィオンテク、ジャブール。はたして今年の全仏は誰が女王に輝くのだろうか――。(C)Getty Images

 今シーズンが始まったとき、現在のテニス界に広がる景色を予見出来ていた人は、どれほどいただろうか?

【動画】28連勝で全仏に飛び込むシフィオンテク、前哨戦でのプレーをチェック!

 時の世界1位のアシュリー・バーティー(オーストラリア)は、開幕戦のツアー優勝を皮切りに、全豪オープンでも頂点へと駆け上がる。その結果のみならず、あらゆるショットを操る穴のないプレーは、女子テニスを次のレベルに引き上げる魅力に満ちていた。

 女王バーティーを破るべく、後続の選手たちが切磋琢磨しその背を追う――。それが、今年2月時点で多くの人々が思い描いた、女子テニス界の勢力図だった。

 青天の霹靂とも言える事態が起きたのは、バーティーの全豪制覇の1か月半後。まだ25歳の女王は、突如として引退を表明したのだ。引退試合もセレモニーもない、発表の日をもっての決別。本人の意向で翌週には、彼女の名前は世界ランキングからも消えた。

 王位に挑戦する機会すらなく、1位へと繰り上がったのは、当時2位のイガ・シフィオンテク(ポーランド)である。もっともその時点での彼女は既に、2月末のカタール・オープン、そして3月上旬のBNP・パリバオープンで連続優勝し、バーティーのライバルとして名乗りを上げたところでもあった。

 天井が抜けたことで突如降ってきた、“世界1位”の肩書き。ただシフィオンテクは重圧を覚えるどころか、自らがその地位に相応しいことを、結果で世に知らしめた。

 バーティー引退後の最初の大会であるマイアミ・オープンでも、一つのセットを落とすことなく、決勝で大坂なおみ(フリー)を破って優勝。

 戦場をハードコートからクレー(赤土)に変えて迎えたポルシェ・グランプリ、さらにはイタリア国際でも頂点に君臨した。

 バーティーから簒奪する手がない以上、勝利こそが女王の証明だと信じるかのような、鬼気迫る疾走。その間に連ねた白星は「28」。さらにはその間、彼女は国別対抗戦にも参戦し、二つの白星を母国にもたらしている。つまりはこの3か月弱で、負け知らずの30連勝。圧倒的な運動能力を生かしたコートカバーを基盤とし、その上に豊富なショットで巧みな戦術を組み立てる。現状では、他の選手たちはその牙城を崩す策や武器を持たない。

 かくして全仏オープンでも圧倒的優勝候補と目されるシフィオンテクだが、ほころびがあるとすれば、圧倒的すぎるがゆえの重圧や心のエアポケットだろうか。

 ただ開幕前の会見を見る限り、彼女の佇まいは依然として、素朴で知的な20歳の女性そのものだ。

 現在読んでいる本について語り、市内観光に心を躍らせ、ローマで食べたティラミスの美味しさを思いだし相好を崩す。

「ティラミスをかたっぱしから食べちゃった!この大会での私の動きに影響がなければ良いんだけれど」

 なるほど、これこそが女王が抱える、唯一の不安材料かもしれない……!?
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