海外テニス

ジョコビッチらかつての優勝メンバーが集結したデ杯セルビア戦で、錦織欠く日本チームが体感したもの

内田暁

2019.11.21

ジョコビッチとのエース対決に挑んだ西岡。(C)Getty Images

 今回のデビスカップに挑むセルビアチームには、ノスタルジー漂う顔が揃っていた。

 絶対的なエースのノバク・ジョコビッチが久々に参戦し、ヤンコ・ティプサレビッチとビクトル・トロイツキというベテラン2人も名を連ねる。キャプテンとしてチームを率いるのは、自ら選手として幾度もデビスカップを戦ったダブルスの名手のネナド・ジモニッチ。そのジモニッチも含めた彼ら4人は、2010年にセルビアに初のデビスカップを持ち帰った顔ぶれである。今大会で引退するティプサレビッチへのはなむけであるかのように、セルビアにはかつての最強メンバーが集結していた。

 そのセルビアに挑む日本は、シングルス1が西岡良仁。ダブルスは、マクラクラン勉/内山靖崇が当然のように名を連ねる。そしてシングルス2には、シーズン中盤から終盤にかけてランキングを150位ほど駆け上った杉田祐一を起用。対するセルビアのシングルス2番手は、チーム最年少27歳のフィリップ・クライノビッチだった。

 17歳時にデビスカップに初招集されたクライノビッチは、将来を嘱望されるも、ケガで苦節の時を経てきた苦労人でもある。昨年もケガでツアーを離れることが多かったが、今季は再びツアーで決勝に勝ち上がるなど、好調時のフォームを取り戻していた。
 
 杉田戦のクライノビッチは、かつて同じIMGアカデミーで共に練習した錦織が、「とんでもない歳下の子がいる」と舌を巻いた能力を遺憾なく発揮する。低い球筋のフォアの強打を左右に打ち分け、ネットに詰めてボレーを決めることも再三。杉田も持ち味の早いリズムで攻め立てるが、一発の強打で形勢逆転するクライノビッチの前に、守勢に回る場面が目立ち始める。第2セット、中盤以降は互角の攻防を繰り広げるも、第3ゲームで落としたブレークの差を詰めるには至らなかった。

 シングルスの第1試合が終わり、2試合目の始まりが近づくにつれ、1万2千人収容可能なセンターコートの空席は、目に見えて埋まり始めた。観客のお目当てはもちろん、ジョコビッチ。そのジョコビッチとネットを挟むのは、先日のフランス戦でモンフィスを破った西岡だ。

 フェデラーやナダルとの対戦経験はすでにあり、今季は多くのトップ選手とも接戦を演じてきた西岡には、ジョコビッチ相手にも相応の自信と、勝利への策があっただろう。事実試合序盤は、70キロ近くのスピード落差のあるファーストサービスや、相手のバックサイドに高く弾むフォアのクロスで、ジョコビッチを翻弄する場面もあった。だが、第4ゲームを8度のデュースの末に失うと、以降は一層のリスクを負って攻める西岡にミスが増える。「セルビアの旗を背負うことを誇りに思う」と胸を張り、大量リードにも一切のスキを見せぬジョコビッチの前に、西岡ができることは少なかった。