世界ランキング30位対36位。
その数字だけ見れば、WTAツアー500の決勝の組み合わせとしては、やや物足りなく感じるかもしれない。
ただ現在の二人の勢いを思えば、これ以上に頂上決戦に相応しい顔合わせもないとも言える。
30位のリュドミラ・サムソノワは、直近の3大会で2度の優勝。
36位のジェン・チンウェンは、現在最も勢いのある19歳。今季スタート時に156位だったランキングを駆けあがり、今大会の決勝進出時点で、初のトップ30入りも決めている。
国籍はロシア、片や中国ではあるが、サムソノワはイタリア育ちで現在はフランスとモナコが拠点。対するジェン・チンウェンは2年前からスペインを拠点とする。両者ともにプレースタイルは、ベースラインからの強打が基軸。粘り強く、状況に応じてスライスやネットプレーを混ぜる器用さも兼備する。
はたして試合は、予想された通りの激しく長い打ち合いとなった。第一セットは両者一歩も引かぬ並走状態から、少ないチャンスをものにしたサムソノワが抜け出す。
だが第2セットに入ると、サムソノワに若干の疲れが見え始めた。今大会、ダブルスとのダブルヘッダーが続いたサムソノワは、「フィジカル的には準備万端だったが、メンタルが疲れていた」と認める。第2セットでは先にブレークするが、ダブルフォールトもあり、すぐにブレークバックを許した。
ただ相手のジェン・チンウェンにしても、初めてのWTAツアー大会の決勝の舞台に、いつもと異なる重圧や緊張を覚えたのは間違いない。
「自分には、こういう試合の経験が少なかった」という19歳は、特にブレークポイントを取り切れなかったことを悔いた。
「40-30のチャンスで、相手のセカンドサービスなのに決めそこなった場面がいくつかあった」
敗者が、試合のターニングポイントとして振り返ったこれらの場面は、勝者が「最近良くなったプレー」と挙げる点と合致する。
この試合もセカンドサービスで59%の高確率でポイントを取ったサムソノワは、ツアー全体で見ても、セカンドサービスのポイント獲得率上位につける。それは彼女が、この夏に練習を重ね改善した点だという。
幼少期をイタリアで過ごし、18歳までイタリア国旗の下でプレーしていたサムソノワは、4年前に国籍をロシアに移した。
結果的にその決断が、ロシアのウクライナ侵攻への制裁措置のため、今季のウインブルドンに出られない結末を招く。「一番好きな大会」に出られなかった事実に、サムソノワは当然ながら深く落胆した。
だが彼女は、「これは自分を向上させる良いチャンスだ」と、視座と思考を変えたという。4週間ツアーから離れた期間に、「サービスの打ち方からフォアハンド、そしてメンタリティを鍛えた」と彼女は言う。特にサービスは、「一回の練習で120~150本は打つ」ことで、精度と自信も深めてきた。
ウインブルドン前のクレーコートシーズンでの戦績は、6大会に出て1勝6敗。
その彼女がウインブルドン後に18勝1敗と大躍進したのは、決して偶然ではない。
試合開始から、2時間5分。7-5、7-5のスコアで優勝を決めたのも、この試合を象徴するように、セカンドサービスでのサービスウィナーだった。
取り組みの正しさを証明し、今季3勝目をつかみ取ったサムソノワは、ランキングも自己最高の23位に上がる。準優勝のジェン・チンウェンと共に、来季のテニスシーンを賑わせそうな新鋭が、台風一過の東京で加速をつけた。
取材・文●内田暁
【PHOTO】全米オープン2022で熱戦を繰り広げたジェン・チンウェンら女子選手の厳選写真!
その数字だけ見れば、WTAツアー500の決勝の組み合わせとしては、やや物足りなく感じるかもしれない。
ただ現在の二人の勢いを思えば、これ以上に頂上決戦に相応しい顔合わせもないとも言える。
30位のリュドミラ・サムソノワは、直近の3大会で2度の優勝。
36位のジェン・チンウェンは、現在最も勢いのある19歳。今季スタート時に156位だったランキングを駆けあがり、今大会の決勝進出時点で、初のトップ30入りも決めている。
国籍はロシア、片や中国ではあるが、サムソノワはイタリア育ちで現在はフランスとモナコが拠点。対するジェン・チンウェンは2年前からスペインを拠点とする。両者ともにプレースタイルは、ベースラインからの強打が基軸。粘り強く、状況に応じてスライスやネットプレーを混ぜる器用さも兼備する。
はたして試合は、予想された通りの激しく長い打ち合いとなった。第一セットは両者一歩も引かぬ並走状態から、少ないチャンスをものにしたサムソノワが抜け出す。
だが第2セットに入ると、サムソノワに若干の疲れが見え始めた。今大会、ダブルスとのダブルヘッダーが続いたサムソノワは、「フィジカル的には準備万端だったが、メンタルが疲れていた」と認める。第2セットでは先にブレークするが、ダブルフォールトもあり、すぐにブレークバックを許した。
ただ相手のジェン・チンウェンにしても、初めてのWTAツアー大会の決勝の舞台に、いつもと異なる重圧や緊張を覚えたのは間違いない。
「自分には、こういう試合の経験が少なかった」という19歳は、特にブレークポイントを取り切れなかったことを悔いた。
「40-30のチャンスで、相手のセカンドサービスなのに決めそこなった場面がいくつかあった」
敗者が、試合のターニングポイントとして振り返ったこれらの場面は、勝者が「最近良くなったプレー」と挙げる点と合致する。
この試合もセカンドサービスで59%の高確率でポイントを取ったサムソノワは、ツアー全体で見ても、セカンドサービスのポイント獲得率上位につける。それは彼女が、この夏に練習を重ね改善した点だという。
幼少期をイタリアで過ごし、18歳までイタリア国旗の下でプレーしていたサムソノワは、4年前に国籍をロシアに移した。
結果的にその決断が、ロシアのウクライナ侵攻への制裁措置のため、今季のウインブルドンに出られない結末を招く。「一番好きな大会」に出られなかった事実に、サムソノワは当然ながら深く落胆した。
だが彼女は、「これは自分を向上させる良いチャンスだ」と、視座と思考を変えたという。4週間ツアーから離れた期間に、「サービスの打ち方からフォアハンド、そしてメンタリティを鍛えた」と彼女は言う。特にサービスは、「一回の練習で120~150本は打つ」ことで、精度と自信も深めてきた。
ウインブルドン前のクレーコートシーズンでの戦績は、6大会に出て1勝6敗。
その彼女がウインブルドン後に18勝1敗と大躍進したのは、決して偶然ではない。
試合開始から、2時間5分。7-5、7-5のスコアで優勝を決めたのも、この試合を象徴するように、セカンドサービスでのサービスウィナーだった。
取り組みの正しさを証明し、今季3勝目をつかみ取ったサムソノワは、ランキングも自己最高の23位に上がる。準優勝のジェン・チンウェンと共に、来季のテニスシーンを賑わせそうな新鋭が、台風一過の東京で加速をつけた。
取材・文●内田暁
【PHOTO】全米オープン2022で熱戦を繰り広げたジェン・チンウェンら女子選手の厳選写真!