海外テニス

楽天OP関係者が明かす“コロナ禍での国際大会の難しさ”「3年前とは比べ物にならないほど簡単ではなかった」<SMASH>

平沢潤

2022.10.19

大会スタッフと写真撮影をするフリッツ。写真:金子拓弥(THE DIGEST写真部)

 2019年以来3年ぶりに開催され、連日盛り上がりを見せた男子テニスの国際大会「楽天ジャパンオープン」(ATP500/ハードコート)。今年はテイラー・フリッツ(アメリカ/世界ランキング9位)の初優勝で幕を閉じたが、多くのテニスファンが待ち望む大会の裏側にはどんな苦労があったのか。大会の選手リエゾンディレクターを務めた平沢潤氏のリポートをお届けしよう。

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 3年ぶりに有明でテニスツアー国際大会が開催されました!

 現実は、3年前とは比べ物にならないほど、様々な高いハードルを越えなくてはならず簡単なものではありませんでした。今年に入って多くのスポーツでも国際大会が開催されるようになってきましたが、個人で戦うテニスの競技性や世界を転戦する国際ツアーの特性が、大会開催に試練を与えました。

 何より私たち大会運営側の高い壁となったのは、日本政府の入国規制。通常、外国人選手が来日してプレーするには、出入国在留管理庁から興行に対する在留資格の認定をもらい、その証明書を添付して入国に不可欠なビザの申請を行ない、認定されてビザが発行されれば晴れて入国できるようになります。

 こうして文にすると大した障害には見えませんが、通常ビザ申請時には出入国の日付を予め記載しなくていけません。ビザが取得できたとしても出発国の感染状況により入国後の隔離規制が違ってくるなど、世界を転戦し、勝敗により出入国のスケジュールが変わるテニス選手たちには到底受け入れられる申請条件ではなかったのです。
 
 これらの問題点を解決するためにテニス協会、大会運営側が外務省、法務省、スポーツ庁に何度も出向き、懸命に説明を重ねて、何とか協力を得られる状況に辿りついたのです。入国に不可欠となるビザ申請の締め切り時期と重なった全米オープンには、大会運営側から現地ニューヨークに出向き、選手やコーチたちが煩わしがる申請作業や書類提出をサポートして、ビザ取得が選手の来日障害にならないように最大限の努力をしました。

 同じ週や前週に他国で開催された大会への人気がある有力選手の出場が多くなってしまった背景には、これらの入国に関する煩わしいビザ申請等が障害になってしまったのは残念ながら事実です。現地まで出向いた担当者として悔しく残念な思いをしました。

 反対に、今年の「楽天ジャパンオープン」、「東レ・パン パシフィックオープン」の両大会に来日してくれた選手たちは、真の日本好きであり、来日を心待ちにしてくれていた選手ばかりだったのも確かです!私たち運営側は、彼らの事を決して忘れません。

 政府が水際対策の緩和を発表したので、再び大きな感染拡大がなければ来年はコロナ禍以前のように来日が可能になると思うので、よりランキングの高い選手たちで賑わう大会になるでしょう。

文●平沢潤

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