海外テニス

テニス界の初代クイーン、クリス・エバート。美しく正確無比なフォアは教科書そのものだった【レジェンドFILE3】

スマッシュ編集部

2019.11.30

その後の女子のお手本になったエバートのフォアハンド。写真:スマッシュ写真部

 クリス・エバートとマルチナ・ナブラチロワは、現代女子テニスの礎を築いた2大巨頭だ。先に頭角を現したのはエバート。16歳で初出場だったUSオープンでいきなり準決勝まで進出。ビリー・ジーン・キングの後継者として熱狂的なファンを獲得した。

 プレースタイルはエバートがストローク(パッシングショット)、ナブラチロワはネットプレー(ボレー)と対照的で、2人の対決は常に面白い展開となった。また、エバートは後にコナーズとのロマンスもあり、キングとクイーンの動向にはテニス界だけでなく世界中のスポーツファンが注目したものだ。

 技術面に目を向けると、エバートはその美しいフォームが多くの後進たちのお手本とされた。このフォアハンドの分解写真を見てもわかるように、腕をこねたりせず、丁寧に前に押し出す正確無比なストロークが彼女の武器。とにかくミスが少ないテニスだった。
 フラットでボールを運ぶスイングは、今見ても美しい。特徴的なのは左手の構え方。右手と全く対称になるようにかざすことで、身体のバランスを見事に一定に保っている(4コマ目)。

 このテイクバック時の構え方は、当時の日本でも教科書とされた。現代ならば左手をもっと深く回すところだが、正確性を重視した当時は、このほうが合理的だった。今もビギナーなどには参考になるだろう。

【プロフィール】クリス・エバート/Chris Evert(USA)
1954年生まれ。WTAランキング最高位1位(75年11月)。グランドスラム通算18勝(AUS:82・84年、RG:74・75・79・80・83・85・86年、WIM:74・76・81年、US:75~78・80・82年)。WTA初代No.1にして、30歳11カ月(当時最年長記録)でもNo.1になった。全てのサーフェスで活躍したが、特に球速の遅いクレーコートでは無類の強さを見せ、全仏では歴代最多の7度の優勝を果たした。シングルスのツアー通算タイトル154勝は歴代2位。表情を全く変えることなくプレーすることから、愛称は「アイスドール(氷の人形)」。

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編集協力●井山夏生 構成●スマッシュ編集部