国内テニス

【伊達公子】セレナは90年代トップ選手のような存在感。フェデラーと共にテニス界の常識を変えた<SMASH>

伊達公子

2022.10.28

女子テニス界は「彼女たちの影響を受けて変化」したと言う伊達公子さん。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)

 今年はテニス選手の引退が注目されています。男子ではフェデラー、女子ではセレナでしょう。セレナは長い期間試合に出ていませんでしたし、とうとうこの時が来たんだなという感じでした。

 セレナは特別な存在で、女子テニスをパワーテニスへと導きました。ラケットの進化という側面もありましたが、たとえそれがなくても、彼女はパワーテニスを築いたでしょう。そしてフィジカル。これも科学的にフィジカル強化が進化してきたタイミングとうまく合致し、パワーテニスを絶対的なものにしていきました。

 セレナと姉のビーナスがツアーに出てきた時、私は解説をしていたましたが、衝撃でした。そして、セカンドキャリアでテニス界に戻ると、彼女たちだけでなく、隙あらば威力のある一発でポイントを終わらせるという女子テニス界に変わっていました。彼女たちの出現によって、他の選手たちも対抗するにはパワーが必要だと考えたわけです。

 特別という点では存在感も違いましたね。90年代のトップ選手は、孤立した形が普通でした。現在は交流ツールも増えて選手同士がオープンな感じです。そんな中でも彼女たちは90年代のような存在感を出しており、他とは違うスタイルでした。練習も姉妹ですることはあっても、他の選手とは行ないません。ヒッティングパートナーが常にいましたし、大きなチームで動いていました。
 
 今はアメリカではガウフも育ってきています。彼女たちが与えた影響は間違いなく大きかったでしょう。女子テニス全体でみても、ビリー・ジーン・キングさんが賞金1ドルからスタートし、男女同額賞金を主張し、それが実現できたのは、あれだけのパワーテニスを見せつけたからこそだと思います。

 フェデラーはコートに立った時の風格はスペシャルでした。でも、一歩コートを離れて、ラウンジにいる時などは威圧感を感じさせないタイプに見えました。彼は誰かが声をかけると、必ず名前で呼び返すんです。よく名前を覚えていますよね(笑)。人柄ですよね。彼を悪く言う人がいないのもわかる気がします。

 フェデラーもセレナも現在41歳です。2人ともトップで走り続け、1度トップ10から陥落し、そこから再度1位に戻りました。100位以内ではなくトップレベルで、この年齢までプレーできたということは今までなかったことですし、テニス界の常識を覆したと思います。2人の存在は、他の選手のモチベーションにもなっていたでしょう。

文●伊達公子
撮影協力/株式会社SIXINCH.ジャパン

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