国内テニス

選手と同じ目線に立ち「自分らしくやることが大事」――“新生添田ジャパン”がデ杯で示した新しい監督像<SMASH>

内田暁

2023.02.06

西岡(左)と添田監督(右)は現役時代から気心の知れた仲。「初陣を勝利で飾れて良かった」と西岡は言う。写真:スマッシュ編集部

 真夏の南半球の日差しが照り付けるコートサイドに、常に彼の姿はあった。

 予選を戦う綿貫陽介や内田海智、野口莉央らの試合の時も、本戦から戦う西岡良仁やダニエル太郎の練習コートにも。そして時に、日比野菜緒ら女子選手たちの試合にも。

 今季から"日本男子代表監督"に就任した添田豪は、全豪オープンテニスの会場で、選手たちに寄り添うように行動していた。

 現役生活に幕を引いてから、まだ3か月弱。本人も"監督"の肩書きをどう捉えるべきか悩み、「選手と距離を少し取った方が良いのかな」と思いもしたという。

「でもそれだったら、俺が監督になった意味がない」

 それが考えた末に、彼が至った結論。

「だったら、僕らしくやった方がいいと思って。だから12月の合宿から全豪の時も、選手とご飯にも一緒に行ったりしていた。そういうところでコミュニケーションを取ることで、違った視点から彼らを見ることもできるし、コート上で伝えることもできる。まずはそういうふうに、自分らしくやることが大事なのかなと思っています」
 
 共に戦うようにコートサイドで声をあげ、練習コート上でボールを打ち合い、選手と同じ目線に立ち意志と言葉を交わす――それが、元世界47位の添田が思い描き体現した、若く新しい監督像だ。

「添田さんの初陣を勝利で飾れて良かった」。デビスカップの対ポーランド戦。開幕戦で盤石の勝利を得た西岡は言う。

「添田くんの最初の試合は、ベストメンバーで出たいという気持ちが結構僕にとっては強くて」。西岡に続き勝利を持ち返ったダニエル太郎も、そう言い安堵の笑みを広げた。

 気心の知れた添田とは、ロッカールームでも雑談を交わし、試合前は各々が心地よい時間を過ごせたという。「いい意味で、緩い」というのが、言葉を探しつつ笑顔でこぼした、西岡の"添田ジャパン"評だ。

 同時にダニエルは、「監督にシングルスに選んでもらえてうれしかった」と、一定の緊張感を抱いていたことも明かす。

「もちろん、(綿貫)陽介や(内田)海智を選んでもおかしくはない流れの中で過ごした、この数か月間だった。だからシングルスに選んでもらってうれしかったし、良い結果を残したいと思っていました」
 
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添田監督が最も欲したマクラクラン/綿貫の勝利