海外テニス

西岡良仁がインディアンウェルズ初戦敗退!直面するシード選手としての戦い方「その辺がわかっていなかった」<SMASH>

内田暁

2023.03.11

ランキングが上がりシードが付くようになった西岡は例年とは違う戦い方を求められている。(C)Getty Images

 低く打ち込むフォアのショットは、相手のカウンターの餌食になった。

 スピンを掛けて高い軌道でリズムを崩しにかかるも、浅くなると重いフォアで叩き込まれる。

 徐々に追い込まれ、リスクを取ってコーナーを狙ったボールは、ラインを少しずつ逸れていった。

 対戦相手との相性か、自身のフィーリングゆえか……。明らかに何かが噛み合わないまま、西岡良仁(世界ランキング34位)は4-6、0-6で敗れた。

 カリフォルニア州で開催中の男子テニスツアーのマスターズ大会、「BNPパリバオープン」(米国・インディアンウェルズ/ハードコート/ATP1000)。2回戦の対クリスティアン・ガリン(チリ/同97位)戦のことである。

 ドロー的には2回戦ではあるが、大会29シードのため1回戦免除の西岡にとっては、これが初戦。

 対するガリンは、予選2試合と本戦1回戦、計3つの白星を既に懐に収めている。

 そもそも予選からの参戦といえど、ガリンは今季すでにツアー3大会でベスト8に勝ち進んでいる実力者。

「いいドローではないと思っていた」というのは、西岡の率直な思いだろう。
 
 多くの選手が「難しい」とこぼすこの大会のボールとサーフェスの相性も、西岡を悩ませた。ただそれ以上に今の彼にとって大きいのは、"シード選手"という未知の領域で直面する、新たな環境や挑戦かもしれない。

 目に見える大きな変化は、試合数だ。例えば西岡は昨年のこの時期、ATP500のアカプルコ大会に予選から参戦し、計5試合を戦っている。続くインディアンウェルズも予選からで初戦を突破。ATPチャレンジャーも含め、昨年の西岡は2月だけで13試合戦っていた。

 対して今年の西岡は、チャレンジャーも予選も戦う必要のない世界の34位。2月はデビスカップを皮切りに、デルレイビーチ、そしてアカプルコに出場したが、4試合しか実戦経験を積むことができなかった。

 結果的にこのルートの選択を、西岡は「ヨーロッパに行くべきだった」と悔やんだ。北中米シリーズを選べば、どうしても空白の1週間が生まれる。
 
 スケジュールの余裕はもちろん体力温存に寄与するが、一歩間違うと、試合勘の欠如につながりかねない。

「今回の遠征スケジュールを組む時点では、僕もまだその辺がわかっていなかった。僕も初めてのことなのでこれも経験だし、今後、スケジューリングはすごく重要になってくると思います」

 それが、今回の遠征で感じ学んだことだった。

 加えて現在は、新コーチのクリス・ザハルカとの間で、プレーの強化方針についても「すり合わせが必要」な時期だという。

「彼と組んで、メンタルや戦術面はすごくよくなった。ただ今は技術的なところで、彼は威力あるフォアでもっと攻めて欲しいというんですが、僕としてはフォアの威力よりも、相手が打ち込んできてからのカウンターや組み立てが僕の持ち味だと思っている。そこは、これからコーチと検討すべき点だと思います」

 昨年はキャリア2つ目のATPツアータイトルを手にし、今年2月には最高位の32位に達した。本人も、そしてコーチも「トップ20」を次の目標に掲げるが、そこはお互いにとって未知の領域だ。

 成長期の痛みに直面する西岡は、インディアンウェルズ後に一端帰国。考えと気持ちを整理して、マイアミ・オープンへと仕切り直す。

現地取材・文●内田暁

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