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【伊達公子】全仏OPのレッドクレーの特徴に最適なプレースタイル「なぜ日本人は苦手なのか」<SMASH>

伊達公子

2023.06.02

クレーで「プレースタイルをどうするかは、いつも悩みました」と言う伊達公子さん。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)

 テニス四大大会「全仏オープン」が、パリで行なわれています。この大会を魅力的にしている要素の1つは、サーフェスがレッドクレーだということです。他のクレー大会と比較するとハードコート寄りだと言われてはいますが、クレーならではの試合展開が楽しめます。

 クレーコートはボールが跳ねるという特徴があり、いかにコートを広く使うかも重要になるので、スピン(順回転のボール)が有効です。ただし、ずっとスピンで粘るわけではありません。現在のテニスは相手をコート後方に下げて、自分は前に行って攻撃を仕掛けるという時代になっています。加えて、ドロップショットやドロップボレーを取り入れて相手を前後に動かす器用さも求められます。

 レッドクレーでは、バウンド後に球速が落ちる影響でラリーが長く続くため、持久力も必要です。そして、ヨーロッパ育ちの選手たちは高低差も含めてコートを広く使うゲームメイクがうまいのです。だからフットワークが良くないと疲れてしまい対応できなくなります。

 足をコートに滑らせて大きくスライディングしながら打ち、戻る時には内転筋や股関節をすごく使うため、身体への負荷もかなりかかります。ハードコートでは反発力を使えますが、クレーでは自力で戻らないといけないため、特別なフットワークが必要です。ゲームメイクに加えて、レッドクレーのためのフィジカルも重要なのです。
 
 打点が高くなるので、私はレッドクレーが嫌いでした。最近の日本人選手は小柄でもグリップが厚く、ある程度バウンドの高さにも対応できるようになっていますが、私はグリップが薄いですし、スピン系でもないので合いませんでした。

 クレーシーズンになるとポジションを少し後ろにして、プレースタイルも多少クレーに適応できるように変えていました。プレースタイルをどうするかは、いつも悩みましたが、クレー用に変えたところでクレー巧者になれるわけではないので、基本スタイルをあまり変えず多少適応させるという結論に至ったのです。

 クレーシーズンは練習内容も変えて臨んでいました。トレーニングでは内転筋など下半身を重点的に行ない、打つ前にスライドする時も身体の軸がブレず、止まった瞬間に自分の出力で切り返すフットワークの練習もしました。試合ではコート内での動きが広くなる中でロブも多く使われるので、斜め後ろに走るメニューも取り入れ、ドロップショットを打つ、また拾う練習もしていました。それでも、やっぱりクレーは苦手でしたけどね。

 ヨーロッパの選手には試合巧者が多く、どこに打てば相手を苦しい状況に追い込めるかということが身体に沁みついています。これは、年に数カ月の試合と練習では敵わない部分だと感じていました。日本人選手が活躍するのが難しいサーフェスであることは間違いありません。

 ジュニアの頃からレッドクレーで長期間練習できれば、日本人が全仏オープンで活躍する可能性も出てくると思います。ただし、日本には雨季もあり、人件費も高い中でレッドクレーの面数を維持するのは簡単ではないでしょう。

文●伊達公子
撮影協力/株式会社SIXINCH.ジャパン

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