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海外テニス

錦織圭が「引退も考えた」苦しい時期を回顧。今のモチベーションは「アルカラスら素晴らしい若手と対戦したい」こと<SMASH>

中村光佑

2023.07.27

子どもたちに迎えられてツアー復帰戦のコートに戻ってきた錦織。ここに至るまでの苦悩を赤裸々に語った。(C)Getty Images

子どもたちに迎えられてツアー復帰戦のコートに戻ってきた錦織。ここに至るまでの苦悩を赤裸々に語った。(C)Getty Images

 現地7月25日に行なわれた男子テニスツアー「アトランタ・オープン」(7月24日~30日/アメリカ・アトランタ/ハードコート/ATP250)のシングルス1回戦で、約1年9か月ぶりとなるATPツアー復帰戦を白星で飾った元世界ランク4位の錦織圭(現439位)。試合後にはATP公式サイトのインタビューで、実戦復帰を果たすまでの苦悩を赤裸々に語った。

 錦織は2021年10月の「BNPパリバ・オープン」(ATP1000)2回戦で敗れて以降、度重なるケガでツアーを離脱。昨年1月に左股関節の手術を施してからは懸命なリハビリに励んで順調に回復していたが、10月には復帰間近というところで練習中に右足首を負傷し、結局昨シーズンは1度も大会に出場できなかった。

 中でも「予想以上に深刻だった」右足首のケガは錦織にとってもショックが大きかったようだ。「1度や2度は引退を考えたこともあった」と率直に告白した錦織は、なかなかトンネルを抜け出せない状況が続いていた時期を振り返りつつ「そこから復帰できるかどうかもわからなかった。それが一番つらかった」とも述べた。

 一方で手術を余儀なくされた左股関節の大ケガについては、人工関節を入れてプレーを続けている元世界王者のアンディ・マリー(イギリス/現42位)ほどひどくはなかったそうだが、「何もしないままプレーを続けていたらアンディのような(もっと大きな)手術をしなければならなかったかもしれない」と言う。
 
 続けて錦織はほぼ同時期に自分と同じ股関節の手術を受けた元世界46位のジェームズ・ダックワース(オーストラリア/現128位)の経験を聞き、はやる気持ちを抑えることができたと語った。

「同じ手術を受けたダックワースと話をしたけど、彼の復帰の早さには本当に驚いた。でも、彼はいくつか問題を抱えていると言っていたから、復帰が早すぎたのかもしれない。だから僕は復帰までもう少し時間をかけることにした」

 数々の選手生命の危機を乗り越えてカムバックを遂げた錦織は、約1年8か月ぶりの復帰戦となった6月中旬のチャレンジャー大会「カリビアン・オープン」でいきなり優勝を飾るなど、ここまでは順調な“完全復活ロード”を歩んでいる。待望のツアー復帰戦となったアトランタ1回戦もジョーダン・トンプソン(オーストラリア/63位)に7-6(5)、7-6(5)のストレートで勝利した。

 ただ何度経験してもケガからの復帰は本当に難しいと錦織は語る。「以前のように動けるかどうかが一番心配だった。試合から遠ざかるとショットの感覚を失い、自信がなくなってしまう。またゼロから作り直さなければならないから、精神的に大変だった」と、長く不安を抱えていたことを明かした。

 最後には「アルカラス(スペイン/1位)やルネ(デンマーク/6位)、シナー(イタリア/8位)といった素晴らしい若手選手たちと、いつか対戦したい。それが、あと数年プレーし続けるためのモチベーションの一部だ」と締めくくった錦織。幾多の苦難を克服した日本のエースが再び世界のトップに駆け上がることを、多くのファンが期待している。

文●中村光佑

【連続写真】スイング中に時間のズレを調節する、錦織圭のジャックナイフ
 
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