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【伊達公子】錦織圭が復帰!“優勝”に惑わされがちだけど期待しすぎは禁物<SMASH>

伊達公子

2023.07.28

「これからのトップレベルへと復帰する道のりは大変」と言う伊達公子さん。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)

 錦織圭選手が復帰しました。戻った1大会目のチャレンジャーで優勝とは出来過ぎのスタートです。錦織選手の実力がチャレンジャーレベルでないのは当然ですが、ブランクが長かったですし、前回のヒジの故障から復帰する時に彼でもフィーリングをつかむのに少し時間がかかるんだと思っていただけに、いきなりの優勝はビックリしました。

 同時に、うまくいきすぎて周りの期待度が高くなりすぎるのではないかと、少し心配になりました。彼の目指しているところは、チャレンジャー優勝やツアー本戦に入ることではなく、トップレベルで戦うことでしょう。

 しかし、「優勝」と聞くと、テニス界の仕組みに詳しい人でなければ、すぐにグランドスラムで上位に進出できると思うのではないでしょうか。チャレンジャーはツアーの下部大会なので、ツアーでの優勝とは大違いです。順調に復活のステップを踏んでいますが、期待しすぎは禁物です。

 3つのチャレンジャーに出場し、試合勘や1週間の連戦をこなせる体力、競った緊張感の中でのクオリティーの高いショットが打てるかなど、色々な感覚を確認できたと思います。ただし、これからのトップレベルへと復帰する道のりは大変だと思います。
 
 若手のレベルも上がってきており、ケガをする前よりもタフな世界に戻るわけです。ブランクがなければ、新勢力の台頭にも、それなりに対応できるものです。しかし、1度離れて戻るとなると、自分自身の埋めないといけない部分がある上に、周りのレベルが上がっているぶん、さらにプラスしていかなくてはトップレベルでは戦えません。

 加えて年齢的にリカバリーにかかる時間が増えてきます。今の男子のフィジカルの強さを考えると、そのレベルを維持するには24時間では足りないという状態になると思うので、これから相当大変でしょう。

 そんな中で、彼がモチベーションを失わず、戻ろうという気持ちを持ち続けられているのがプラス要素です。本人でもこのモチベーションはコントロールできないものだと思うので、自然にまた戦いたいと思っている証でしょう。皆さんには、彼が痛みなくプレーできて、モチベーションを持って、目指す場所にまで戻るための準備が整ってきたことを喜んでほしいと思います。

文●伊達公子
撮影協力/株式会社SIXINCH.ジャパン

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