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「スケジュールの変更なし!」全米オープンが選手に不評の“ナイトセッション”に言及<SMASH>

中村光佑

2023.08.18

試合時間が深夜に及ぶこともあり選手間で不評な“ナイトセッション”だが、全米オープン側は遅くなることも大会の魅力と考えている。(C)Getty Images

 男女を問わず1日に数多くの試合が組まれるテニスツアーでは、接戦が続くと最終試合の終了時刻が日を跨ぐことも少なくない。悪天候による進行の遅れが生じた場合も同様の事態が発生する。そんな中でここ最近は現役選手からテニス団体や各大会に対して「もっとフレキシブルに大会を進めてほしい」との声が相次いでいる。

 先週の女子ツアー「ナショナルバンク・オープン」(WTA1000)でも度重なる雨天順延によりエレナ・ルバキナ(カザフスタン/世界ランク4位)が、ダリア・カサキナ(ロシア/同13位)に勝利したシングルス準々決勝は深夜3時に終了。続く準決勝で敗退したルバキナは、会見で大会主催側に柔軟なスケジューリングを行なうよう働きかけなかったWTA(女子テニス協会)を「少し未熟だったと思う」と批判していた。

 ルバキナに続く形で女子元世界1位のビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ/同18位)も「夜中に試合が終了するなんて選手からしたらとんでもないこと」と糾弾。さらには現世界女王のイガ・シフィオンテク(ポーランド)も試合終了時刻が深夜帯になるケースが増えつつある現状について「選手の健康に焦点を当てるべき」と声を上げていた。

 だがそんな選手たちの願いもむなしく10日後に開幕する年内最後の四大大会「全米オープン」(8月28日~9月10日/ハードコート)では、例年通りナイトセッションを挙行することが発表された。ちなみに「眠らない街」ニューヨークで開かれる全米は、毎年2万人以上を収容するセンターコートでナイトセッション2試合が組まれるが、基本的に第1試合の開始時刻は「19時以降」と設定されている。

 センターコートには屋根が付いているため雨天順延の心配はないが、試合の進行具合によっては全ナイトマッチの終了時刻が日付を越えてしまうケースも多々見られる。一例を挙げると最終試合に組まれたヤニック・シナー(イタリア/現6位)とカルロス・アルカラス(スペイン/現1位)による昨年の男子シングルス準々決勝は壮絶な打ち合いとなり,5時間を超える激闘をアルカラスが制した。現地22時ごろに始まったこの試合が終了したのは翌日の午前3時前だった。
 

 現地8月17日に『AFP通信』は全米のトーナメントディレクターを務めるステイシー・アラスター氏のコメントを引用する形で、「大会のスケジュールは変更されない」と報道。一方で同氏は深夜帯に終了する試合が問題視されていることを認識しているとしつつ、次のように語った。

「昨年の全米オープン閉幕後、深夜に終わる試合に関して盛んに議論・見直しがなされたことに疑いの余地はありません。テニスにおいて我々が抱えている課題の一つは、試合開始時刻と終了時刻が決められていないことです。時には短い時間で試合が終わることもあれば、5時間に及ぶ長い試合もあります。現時点では我々はナイトマッチ2試合という形を維持していきます。引き続きそれを評価していきます」

 また同大会を主催する全米テニス協会のCEO兼事務局長を務めるルー・シャー氏も商業的な側面からナイトセッションの重要性を強調。「それはファンの興奮を生む要素の一部になっています。ある意味、眠らない街はファンが愛するものです。そうは言っても、我々にはアスリートの健康を確実に守る義務があります。ただ、ニューヨークのファンがナイトマッチによって元気づけられていることも私たちは知っています」と主張した。

 競技の特性上仕方ない部分はあるのかもしれないが、各大会共々「選手あってのトーナメント」という図式は忘れてはならない。それを踏まえたうえで迅速に議論を進めていくべきだろう。

文●中村光佑

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