女子テニスの国際大会「観音温泉カップ 浜松ウイメンズオープン」(ITF25,000ドル)は10月15日に決勝戦を行ない、第2シードのジョアナ・ガーランド(台湾)が、第7シードの清水綾乃を6-2、4-6、6-4で破り同大会初優勝を手にした。ガーランドは、台湾人の母親とイギリス人の父を持つ英国生まれ。ITF大会は通算7勝目で、砂入り人工芝でのタイトルは初だった。
前日の夜から降り出した雨は、晴れ間が覗く翌朝も、会場の人工芝を湿らせていた。試合開始は、予定通り午前11時。その立ち上がり、4ゲーム連取で主導権を握ったのは、長身のガーランド。水を吸って文字通り重くなったボールは、パワープレーヤーに優位に働いた。
ただ試合が進むにつれてコートは乾き、するとボールは軽くなる。加えて砂が乾いたことで、足元は滑りやすくなっていた。砂入り人工芝の経験は今回を含め2大会のガーランドに対し、清水は砂入り人工芝の経験が豊富。第2セットは、終始先行した清水の手に。トロフィーの行方は、ファイナルセットに委ねられた。
トイレットブレークを挟み気持ちも新たに挑んだ第3セットでは、ガーランドがブレークのスタートを切る。清水も得意のバックを軸に追いつくが、重要な局面になるほどミスの減るガーランドが、終盤で再びつき放した。ウィニングショットは、サービスで崩してからのバックのウイナー。今大会のガーランドの、強さを象徴する幕切れだった。
両選手は4年前にも、大阪市開催のITF25,000ドルで対戦し、ガーランドが勝っている。当時のガーランドは、ノーランキングの18歳。対する清水のランキングは、200位を切っていた。
「当時の私にとってキャリア最大の勝利だった」という金星こそが、ガーランドのツアーキャリアの起点。
一方の清水は、この時の対戦相手が、ガーランドだとは認識していなかった。ただ明確に覚えているのは、この日が、彼女の21歳の誕生日だったこと。
「誕生日に、若い外国人選手にボコボコにやられたことは覚えていた」と、苦い笑いをこぼした。
その2年後の2020年から2022年にかけ、清水は2度もヒジにメスを入れ、多くの時間をコート外で過ごしていた。ようやく本格的に復帰したのが、昨年の浜松大会。この1年でショートアングルを習得し、プレーの幅を大きく広げた清水は、「ケガする前に戻るのではなく、そこを越えていかなくてはいけない」と毅然と明言した。
ガーランドも、一昨年に左手首をケガし、ツアーを長期離脱した経験を持つ。ただその間に片手バックで打つスライスを体得。「そのスライスが、今大会のこのコートで有効だった」と笑みを広げた。
いずれもケガの苦しみを知り、その苦境を乗り越え新たな強さを獲得した二人は、ここから更なる上を目指す。
取材・文●内田暁
【PHOTO】清水綾乃の両手バックハンド、ハイスピードカメラによる『30コマの超分解写真』
【PHOTO】清水綾乃のサービス、ハイスピードカメラによる『30コマの超分解写真』
【伊達公子】観戦しながら上達したい時に選ぶ席。世界レベルの試合を会場で見る時のポイント<SMASH>
前日の夜から降り出した雨は、晴れ間が覗く翌朝も、会場の人工芝を湿らせていた。試合開始は、予定通り午前11時。その立ち上がり、4ゲーム連取で主導権を握ったのは、長身のガーランド。水を吸って文字通り重くなったボールは、パワープレーヤーに優位に働いた。
ただ試合が進むにつれてコートは乾き、するとボールは軽くなる。加えて砂が乾いたことで、足元は滑りやすくなっていた。砂入り人工芝の経験は今回を含め2大会のガーランドに対し、清水は砂入り人工芝の経験が豊富。第2セットは、終始先行した清水の手に。トロフィーの行方は、ファイナルセットに委ねられた。
トイレットブレークを挟み気持ちも新たに挑んだ第3セットでは、ガーランドがブレークのスタートを切る。清水も得意のバックを軸に追いつくが、重要な局面になるほどミスの減るガーランドが、終盤で再びつき放した。ウィニングショットは、サービスで崩してからのバックのウイナー。今大会のガーランドの、強さを象徴する幕切れだった。
両選手は4年前にも、大阪市開催のITF25,000ドルで対戦し、ガーランドが勝っている。当時のガーランドは、ノーランキングの18歳。対する清水のランキングは、200位を切っていた。
「当時の私にとってキャリア最大の勝利だった」という金星こそが、ガーランドのツアーキャリアの起点。
一方の清水は、この時の対戦相手が、ガーランドだとは認識していなかった。ただ明確に覚えているのは、この日が、彼女の21歳の誕生日だったこと。
「誕生日に、若い外国人選手にボコボコにやられたことは覚えていた」と、苦い笑いをこぼした。
その2年後の2020年から2022年にかけ、清水は2度もヒジにメスを入れ、多くの時間をコート外で過ごしていた。ようやく本格的に復帰したのが、昨年の浜松大会。この1年でショートアングルを習得し、プレーの幅を大きく広げた清水は、「ケガする前に戻るのではなく、そこを越えていかなくてはいけない」と毅然と明言した。
ガーランドも、一昨年に左手首をケガし、ツアーを長期離脱した経験を持つ。ただその間に片手バックで打つスライスを体得。「そのスライスが、今大会のこのコートで有効だった」と笑みを広げた。
いずれもケガの苦しみを知り、その苦境を乗り越え新たな強さを獲得した二人は、ここから更なる上を目指す。
取材・文●内田暁
【PHOTO】清水綾乃の両手バックハンド、ハイスピードカメラによる『30コマの超分解写真』
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