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女子テニスの重鎮、ナブラチロワ氏がガン克服までの苦悩を明かす「死刑宣告になるかもしれないと恐怖を感じた」<SMASH>

中村光佑

2023.12.07

一時は「1年以内に死ぬかもしれない」と覚悟したというナブラチロワ氏。ガンを克服し、先月のWTAファイナルズでは元気な姿を見せた。(C)Getty Images

 四大大会のシングルスで通算18勝を誇る女子テニス元世界ランク1位のマルチナ・ナブラチロワ氏(チェコ/67歳)が、米著名ジャーナリストのカーラ・スウィッシャー氏(60歳)が司会を務めるポッドキャスト『On with Kara Swisher』に出演。そのなかで昨年11月に罹患した咽頭ガンと乳ガンを克服するまでの苦悩を語った。

 当時53歳だった2010年4月にも乳ガンの診断を受け、その後の懸命な治療で半年後には寛解に至ったナブラチロワ氏。今年10月に67歳を迎えた彼女は、自身が公式アンバサダーを務めた昨年11月の女子テニスシーズン最終戦「WTAファイナルズ」の会場を訪れた際に偶然喉のしこりに気付き、すぐさま受けた検査でステージ1の咽頭ガンが判明。同じくステージ1の乳ガンの併発も確認された。

 発見が比較的早かったことも幸いしたのか、今年3月にナブラチロワ氏は2つのガンが寛解したことを報告。すでに仕事も再開しており、先月初めのWTAファイナルズ(メキシコ・カンクン)の表彰式や様々なツアー大会に姿を見せるなど精力的に活動している。

 人生で2度目の闘病生活は、ナブラチロワ氏にとって「本当に大変だった」という。

「診断を受けた時は思わず『ああ、私は1年以内に死ぬかもしれない』と口に出してしまった」そうで、「その2つのガンを診断した医師からは、肺や腎臓、肝臓または脳に転移している可能性もあると言われた」とも告白。当時の心境について「自分の状況がはっきりするまでは、これは死刑宣告になるかもしれないと恐怖を感じた」と明かした。
 
 またガン宣告からしばらくの間は死の恐怖で自分をコントロールできず、「3日間完全にパニックになり、もしかしたら来年のクリスマスを過ごすことはできないかもしれないと思った。それからやりたいことリストを頭に浮かべて、人生最後の年に乗りたい車は何なのかを考えたりもした」とナブラチロワ氏は回顧する。

 闘病生活では改めて「他の全てのことが後回しになってしまう」ことがわかったそうで、その過程で「できる限り私のエネルギーを吸い取ってしまう人からは離れる」ことを学んだという。そして「自分のガンでは死に至らないとわかってからは、予後は非常に良好だけど、それでも間違いなく物事を大局的に見るようになった」と、自身の経験を踏まえて語った。

 苦しみながらも何とかガンを乗り越えたナブラチロワ氏。再発には細心の注意を払いながら、充実した生活を送っていってほしいと切に願う。

文●中村光佑

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