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脱ブラック! 部活コーチの外部委託で、教員の負担を軽減、生徒の上達という循環を生み出した公立中学。その課題に迫る|後編

スマッシュ編集部

2020.01.03

外部コーチがうまく機能するには教員との協力体制が必要だ。写真:茂木あきら(THE DIGEST写真部)

 前編では外部コーチのメリットについて取り上げたので、今回は課題について。ここでは、政府が勧める「部活動指導員」ではなく、今後も必要な存在となるであろう「外部指導者」の課題について考えていく。

 まず難しいのが、先生と外部コーチ(指導者)との微妙なバランスの構築だ。杉並区の和田中学校(※公立中学校で初めて外部コーチを委託した学校)のテニス部顧問の押野直人先生は、「(外部コーチに)全部お願いするとクラブチームにようになってしまうし、全部自分でやるとすごく負担になるので、自分も入りながらコーチにも任せるという関係を築くのに時間がかかるのかな、と思います」と言う。

 週末は外部コーチが見て平日は顧問が見るという、完全に分かれた状態になっていると、コーチと教員が連携を取るのは難しい。学校と指導者をつなげ、コーチの派遣を行なっているスポーツデータバンクの皆川紗由莉さんは、「コーチに先生たちは干渉してはいけない契約になっている」と現状を話してくれた。

 色々と問題が起こることを回避する意図のようだが、この点について和田中の外部コーチを長く務めている深田悦之氏は、「最も重要だと思っているのはコーチと教員が協力すること。それがなければ絶対にうまくいかない」と力説する。
 
「子どもの目線から見た大人のダブルスタンダードが出てくると子どもは勝手なことを言い出し始めます。だから練習はこういうポリシーでやり、こういう目標を立てているということを、現場にいなくても先生と共有しておかなくてはいけません」

 さらに先生は、生徒たちの部活に影響するかもしれない学校での出来事をコーチに伝え、コーチは部活で見せる生徒の態度などを先生に伝える。こういうことで新たな生徒の一面を知る機会にもなるなど、共有することでプラスになることは多いようだ。教員とコーチのコミュニケーションによって、ズレが生じる場合もあるが、双方の協力体制は必要だ。

 深田氏は、「外部コーチが来てくれると助かるけど、なんだか信用できないんだよねと言う先生が多い」と言う。学校の事情を知らない外部コーチが突然やってきて、もしも「全国を目指すぞ」と言い出したら部活や学校は混乱してしまう。なぜなら公立の学校はそういうコーチを求めていないからだ。