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海外テニス

全米オープン混合複の“前倒し開催”で波紋! ダブルスランキング無視に前年王者は「大きな不公平だ」<SMASH>

中村光佑

2025.02.13

全米オープンは開幕前週に混合ダブルスを行ない、シングルス上位者が出場しやすい方式に変革する。前年優勝のババソリ/エラーニらダブルスの強豪は反発している。(C)Getty Images

全米オープンは開幕前週に混合ダブルスを行ない、シングルス上位者が出場しやすい方式に変革する。前年優勝のババソリ/エラーニらダブルスの強豪は反発している。(C)Getty Images

 テニス四大大会「全米オープン」(本戦8月27日~9月7日/アメリカ・ニューヨーク/ハードコート)は2月11日、今年の混合ダブルスのフォーマットを大幅にリニューアルすると発表。これを受け選手の間では賛否両論の声が上がっている。

 昨年まで全米の混合複は男女シングルス本戦の2週目に重ねる形で実施されていたが、今年は本戦開幕前の予選が行なわれる週(通称“ファンウィーク”)に日程を変更するとのことだ。全16組が出場し、うち8組はシングルスランキングで選出。残る8組はワイルドカード(主催者推薦)とする。これに伴いこれまで適用されていたダブルスランキングでのエントリーは廃止される。

 混合複の開催日程は8月19日と20日の2日間で、試合は全てセンターコートのアーサー・アッシュ・スタジアムか2番目に大きいルイ・アームストロング・スタジアムで実施。従来の6ゲーム先取3セットマッチから4ゲーム先取3セットマッチに短縮し、ノーアドバンテージ方式が採用される。ゲーム4-4でタイブレーク、1セットオールとなった場合は10ポイントマッチタイブレークで勝敗を決める。

 決勝だけは6ゲーム先取で行なわれるが、ノーアドバンテージ、ゲームカウント6-6でタイブレーク。1セットオールになると10ポイントマッチタイブレークだ。優勝賞金は100万ドル(約1億5000万円)と高額で、単独イベントとしてかつてない注目を集めることになりそうだ。

 今回の変革は昨年試験的にシングルス本戦開幕前に開催された混合複のエキジビションマッチ「US Open Mixed Madness」が大成功を収めたことを受けてのもの。この時は恋人同士として知られるステファノス・チチパス(ギリシャ/11位)とパウラ・バドサ(スペイン/10位)のペアが優勝。これが選手やファンから好評だったことや高視聴率を記録したことからリニューアルに踏み切ったという。
 
 一連の刷新について主催者のUSTA(全米テニス協会)のCEO(最高経営責任者)、ルー・シャー氏は次のように期待感を語った。

「混合ダブルスに独自のスポットライトを当てることで、その価値を高め、スポーツ界の素晴らしい才能にさらなる注目を集めることになるでしょう。世界中のファンがエリート選手たちのペアを楽しみながら、テニスの新たな形を体感できると思います」

 だがダブルスを主戦場としてきた選手からは反発の声が高まっている。昨年の全米混合複を制したアンドレア・ババソリ/サラ・エラーニ(共にイタリア)は連名でインスタグラムに「大きな不公平だ。利益の論理だけに従って決定を下すことは、根本的に誤っていると我々は考える。誰にも相談されることなく下された今回の決定を、我々は受け入れるしかない」と批判の言葉を投稿。

 また混合複で2度の四大大会優勝を誇るヤン・ジェリンスキ(ポーランド/複元7位)もXで「選手とのコミュニケーションも、選手のキャリアにとってその種目が何を意味するかへの考慮も、歴史や伝統への敬意もない。悲しいことだ」と怒りをにじませている。

 一方で海外メディア『tennishead』によれば、テイラー・フリッツ(アメリカ/男子4位)やジェシカ・ペグラ(アメリカ/女子5位)ら一部のシングルスプレーヤーはこの案を歓迎しているという。しばらくはテニス界を大きく揺るがすことになりそうだ。

文●中村光佑

【動画】ババソリ/エラーニが初優勝を飾った2024全米オープン混合ダブルス決勝ハイライト

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